私の出身業界がIT系だったので、今でも同業界関連の付き合いが多いですが、対外的にはいかにもリモートワークが進んでいそうに見えていても、実はそれが難しい人たちが結構たくさんいます。
当初は「紙書類での運用が必要」などというアナログすぎて笑えない理由もありましたが、このあたりはおおむね改善されつつあります。
今でも問題なのは、特にセキュリティが厳重な金融や保険などをはじめとしたシステムの業務で、客先常駐の形で働いている人たちが、簡単にリモート移行できないことです。
外部から侵入できないローカルなネットワーク環境しかないなど、物理的にどうしようもないものもありますが、技術的には対応可能でも、それを認めないということが数多くあり、理由のほぼすべてはセキュリティに関わることです。
これまでの運用では、アクセス可能な場所や端末、アクセス権限を持った人員を制限することでセキュリティを保っていることも多いですが、そういう物理的な制限が一番確実な方法であることは間違いありません。
ここで、いくら世の中がリモートワークになってきたからと言って、それを許すことは確実にセキュリティリスクを高めますから、発注元やエンドユーザーは、みんな極力やりたくないと思うでしょう。やはり危険度が高すぎるという認識です。
私の知人によれば、こういう中でもリモート勤務ができるか否かで重要なのは、「信用されているかどうか」にあるといいます。
大規模システムとなれば、当然多くの人間がかかわりますが、そうなれば中には意識が低いルーズな会社や技術者が混じってくることがあります。出力禁止の資料を勝手に印刷して持ち歩いているといったことが、ごくたまにはあるらしく、当然出入り禁止などのペナルティーを受けますが、そんな状況の会社からリモート勤務と言われても、とても信用できるものではありません。当然ですがそれは認められないでしょう。
また、「信用されればできるようになるのか」というと、話はそれほど簡単ではないようです。
もし何か問題が起これば、それを「信用して」認めた担当者やその上長、さらには部署、会社全体の責任にもなり得ます。「そんな責任は取りたくない」となれば、そもそも100%信用はしないでしょうし、認めさえしなければ責任を問われることもありません。発注元やエンドユーザー企業からすれば、そこまでして発注先のリモート勤務を推進するメリットはありません。
テクノロジーでセキュリティリスクを回避する方法はあるでしょうが、余分な投資が必要になりますし、アクセスさせない、持ち出させないという物理的な処置に勝るものはありません。
相当に強い「信用」がなければ、認めてもらうのはなかなか難しいでしょう。
あるIT会社では、社長が先頭に立って徹底的に顧客と交渉し、一部でリモート勤務ができるように認めさせたという話がありました。それくらいの交渉力や政治力でもなければ、実際にはなかなか難しいところでしょう。
いかにも先進的に見えそうなIT業界でも、交渉力や政治力、さらに信用次第とは、まだずいぶんアナログな感じです。
このような業界や職種に限らず、リモート勤務ができそうなのにできない、認めてもよさそうなのに認められないという人は、結構大勢いるのだと思います。
リモート勤務ができる、できないの境界線は、テクノロジーで徐々に解決されてくる問題だと思いますが、どんなに時代が進んでも、新しいことを始める入り口には、まず「信用」があるのだということも、いまあらためて思っているところです。
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