2020年7月2日木曜日

「プライベート重視」の職業意識は会社のせいもある


特に若い世代で、「仕事よりもプライベート」という職業意識は、様々な調査結果の中でも、その比率が上がり続けていることが明らかになっています。
私の場合は周りに経営者が多く、そういう人たちは「今この時間は仕事なのかプライベートなのか」が切り分けづらいことが多いので、たぶんどちらを重視するかという感覚自体が無さそうです。質問しても、「どちらとも大事」などという答えになるのではないでしょうか。

私自身も、仕事とプライベートのどちらも人生の一部なので、あまり切り分けることに意味を見出していません。人それぞれの考え方で良いと思っています。

ただ、私より少し上の世代には、「会社人間」と呼ばれていたような人がいて、そういう人からは「仕事はそんなに甘くない」「仕事重視が当たり前」という声を聞きます。自分たちはずっとそういう職業意識の中で過ごしてきていますから、そんな感覚を持つのも仕方がないかもしれません。
ただ、時代が変わり、職場環境も変わる中で職業意識も変化してきているわけで、「仕事よりもプライベート」となってきたことには、それ相応の理由があります。大きいのは「会社での仕事を優先してもメリットがあるとは言い切れない」ということです。

今から20年以上前の私たちの親の世代で、当時大企業の管理職だったような人たちは、今でいうプライベートの部分まで、会社からの支援がかなりあって、その恩恵も大きなものでした。
例えば、都内の便利な場所に戸建ての社宅があり、社用車の送迎が毎日あり、全国に保養所や研修施設などの箱モノがたくさんあり、それらすべてが格安で利用できました。この手の福利厚生は今でもありますが、当時はちょっとレベルが違っていました。
終身雇用で職を失う心配はなく、年功序列で毎年給料は少しずつ上がります。定年まで勤め上げれば、相当の退職金と、その後は企業年金もあります。大手企業には今でも似た雰囲気が残っていますが、会社に自分の生活すべてを委ねて従っていることに、以前は大きなインセンティブがありました。

そして、今はどうかといえば、これらの環境が大きく変わりました。有名企業でも倒産するような時代で、いつリストラにあって肩たたきされるかわかりません。昇給は成果次第、ポストは減って肩書がつく保証はありません。福利厚生施設などは、経費節減でずいぶん少なくなりました。
最近は少し変わってきましたが、個人キャリアに配慮しない異動や配置は相変わらず行われ、まるで終身雇用の発想のままです。会社の仕事に過剰適応したのに、状況によっては放り出されてしまう可能性があるのは、自分の生活をおびやかされる怖さがあります。
つまり、同じ会社に居続けること、すべて会社に従っていることの方が、今はむしろリスクになりつつあるのです。

このように「仕事よりもプライベート」となってきた理由には、環境変化に合わせて会社側が姿勢を変えてきたことにも一因があります。
今は会社と社員の関係が少しずつ見直されている最中であり、「仕事よりもプライベート」ということも含めて、今後もさらに変わっていくでしょう。

問題は、すでに前提が大きく変わっているにもかかわらず、「仕事優先が当然」など昔の価値観を持ち出したり、終身雇用のままの感覚で会社が社員を振り回していたりするような状況です。

「仕事よりもプライベート」の職業意識には、会社側の変化にも一因があり、それはなるべくしてなってきたことです。
私はまったく悪いこととは思いません。

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