新型コロナの影響で在宅勤務をする機会が増え、それとともにリモート会議に参加することが増えた人は多いと思います。
様々なツールがありますが、基本的には複数の人と同時につなぐテレビ電話で、画面に参加者の顔が分割で映し出され、お互いに会話ができるというものです。
実際に体験してみると、これだけでも意外に用が足りてしまうことがわかり、これから新しい働き方が進んでいく中では、この機能が重要な位置を占めていくと想像されます。
そんな中、SNS上で目にした話題ですが、このリモート会議システムで「画面を役職順に並べたい」とか「上の人ほど画面を大きくしたい」という要望をしてくる会社があるそうです。
そもそも画面上に上座下座の概念があるのかわかりませんが、会議という場の主旨としてはまったく意味がないことです。私などは瞬間的に「くだらない」と思ってしまいますが、たぶん言ってくる人たちは大真面目でしょう。
ネット上では「今どきそんなこと考える会社なんて…」という否定的な論調がほとんどでしたが、多くの日本企業の現場の様子を見ていると、声は上げていなくても、「偉い人を上に」という感覚の人は、実はかなり多いのではないでしょうか。
こういう部分は、まさに「社風」が見えるところなので、私はよく観察しています。
このSNSのような発想が出て来るのは、社内の序列や上下関係に結構厳格なこだわりを持った、間違いなく「古い」タイプの価値観を持った会社でしょう。
そんな会社が「会議を円滑に行う」という機能に最適化した「新しい」リモート会議ツールを使う中で、暗黙の序列や上下関係が表現できないことに、違和感をもってしまったのではないでしょうか。
そしてこういう場合、役職者本人が「自分を上に映してほしい」などということはめったになく、ほとんどは本人以外の誰かが言い出します。
社内の宴会などであれば、「俺を上座に座らせろ」などという上司は、私が見てきた中でも本当に数人で、基本的には周りが気を遣っておこなうことです。序列にこだわる会社には、何かと上の人をチヤホヤ気にする周りの人が必ずいます。
そういう会社は「統制が取れている」「組織的」という見方があるかもしれませんが、「保守的」で階層間の「コミュニケーション不全」に陥りやすい傾向があります。一方通行、意見が言えないといったことが起こるのです。
また、この手の会社は年長者が多くて決定権を持っているので、「自分たちの頃は」と古いやり方にこだわりがちで、新しいものはなかなか取り入れられません。そんな理不尽な現状維持バイアスは、他にも至るところに出てきます。
新型コロナ対応を機に、必要に迫られて使わざるを得なくなった「新しい」ツールをきっかけに、埋もれていた自分たちの「古い」価値観が、あらためて可視化されたという話が数多くあります。
この例では、リモート会議の質をどう担保するかというような本質的な話ではなく、「上司の画面上の配置」という優先度の低い話が前面に出てきたわけですが、これはまさに長年培ってきた社内の価値観、すなわち「社風」によるものです。「上をチヤホヤすることが善」という文化です。
こういう文化は、実は意外に簡単に変えられます。上の人が「無駄な気遣いは不要」と宣言するだけのことです。チヤホヤされてそれに乗っかる上司にも責任があります。
変化が激しい時代に、権威や上下関係にこだわる会社は、たぶん生き残れません。年令や役職に関わらず、質的により良い意見が取り上げられる組織であることが重要です。「上をチヤホヤする人たちがいる会社」では、その流れには乗れません。
良くないことばかりのコロナ禍ですが、やむを得ない変化のおかげで、あらためて見えてくることがあります。
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