2021年5月13日木曜日

不安な時ほど自己中心的になる「権限」「権力」の使い方

某大手薬局チェーンの経営者夫妻が、コロナのワクチン接種に関して、居住している自治体に接種順で優遇することを求めて圧力をかけていたという報道がありました。かなり一生懸命に地域貢献をしてきた経営者のようで、自治体に対する影響力はあったようです。

 

自治体側はかなりしつこく要求されて圧力をかけられていると感じたことと、一度は副市長の判断で優先予約を受け入れたものの、報道機関のスクープなども影響して最終的には拒否したことが公表されています。

一方企業側からは、秘書が行き過ぎた対応をした謝罪と、当事者である経営者夫妻は必ずしも優先接種を望んでいなかったというようなニュアンスのコメントが出されました。

 

双方の主張には若干の食い違いもあるようで、例えば会長である夫は接種を望んでいなかったとコメントしているのに、当日は途中まで接種会場に向かっていたのはどういうことだったのかなどと言われています。秘書から自治体が何度も繰り返し連絡を受けて、そこでは恫喝のようなニュアンスもあったということ以外は、誰が言い出したことかというような事実はわかりませんし、たぶん今後も明らかになることはないでしょう。

 

ここで、本人ではない第三者であり、基本はビジネス上の関係であるはずの秘書が、なぜそこまで強硬に理不尽な話をねじ込んできたのかという理由を少し考えてみました。

一番の興味は、秘書がそこまでやったモチベーションは何かということです。

 

もしもこれを言い出したのが経営者夫妻のどちらかだとして、その言い方は二通り考えられます。「何とかならないだろうか」という要望の場合と、「何とかしろ」という指示の場合です。

「要望」の場合は、どこまでやるかは秘書の意思によるところが大きく、「指示」の場合は、秘書の意思にかかわらず強制感を持った可能性があります。

どちらの場合も秘書が理性的に行動できれば、「話したけど無理」など、理由をつけてその行為自体を却下することはできますが、それができないとすれば、「経営者の指示は絶対的」など反論できない関係性ということになります。

 

もしかすると、秘書の側から「早くできないか相談してみましょうか」などと気遣いをした可能性があります。本人たちに確認すらせず、自らの判断だけで打診した可能性もあります。

「経営者夫妻の不安を解消してあげたい」「早く何とかしてあげたい」という一心か、もしくはよく言う「忖度」かもしれませんが、いずれにしてもその行動は不適切で、周りに対する配慮に欠けています。自分たちの都合だけで状況が見えなくなっています。

このどちらの場合も、経営者夫妻と秘書はわりと近しい関係だと思われ、場合によっては家族同士のような感覚だったかもしれません。自分も含めた「身内を守りたい」が秘書のモチベーションだったことになり、そのために自分たちが持つ権力を最大限に使おうとした結果、批判を浴びたということです。

 

これと同じような話は、実はどの世界でもわりと普通に起こっていることです。

例えば知り合いに頼んで仕事を回してもらうとか、関係している知人経由で希少なチケットなどを入手するとか、なかなか予約が取れない飲食店で関係者に便宜を図ってもらうとか、必ずしもフェアとは言えない依頼や便宜供与は数々あります。そして、このような自分に都合が良いアンフェアは、意外に多くの当事者が受け入れてしまうものです。さらに、それができそうで権力があることを自覚していると、その力を躊躇なく使おうとする人たちは意外に多く存在します。

 

不安が大きい時ほど人は自己中心的になり、「権限」「権力」を持っている人はそれを自分のために使いがちになり、今回の一件はその象徴のように感じます。

リーダー、マネージャーという立場にいれば、小さくても必ず何かしらの「権限」「権力」を持っています。不安な時や苦しい時ほどその使い方が問われ、周りからも見られていることは自覚しなければなりません。

 

 

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