2021年7月12日月曜日

「エンパシー(共感力)」が足りない?

最近、目に留まることが増えた言葉に「エンパシー」というものがあります。人材育成や組織運営の中でのキーワードとしてよく出てきます。

心理学では「自己移入」などと訳され、他人の考えていることや立場などを、自分に置き換えて考えることを言います。自分と価値観が異なる他人が何を考えているのかを「想像する力」や、他人への「共感力」などと言い換えられるときもあります。

相手の考えや思いを想像して理解し、その考えに同意できなかったとしても、一度は自分のこととして受け止めて、自分にできることを考える力がエンパシーです。

 

これと似たニュアンスの言葉に「シンパシー」があり、同じく「共感」「共鳴」「仲間意識」といった意味で使われますが、シンパシーが感情や感覚をもとにしていて、「同情」のような気持ちも含んだものであるのに対し、エンパシーは自分の似た経験をもとに論理的に考えるものという違いがあるとされます。

海外では、指導者、リーダー、その他エリートといわれる層に対して、エンパシー教育が取り入れられているそうです。自分と違う立場の人たちの状況を想像するエンパシーの能力が、リーダーには重要とされているからです。

 

なぜここで「エンパシー」を取り上げたかというと、この考え方が不足していると思えることが徐々に増えてきていて、特に最近は目につくことが続けて起こっているからです。

政治的なことでいえばずいぶん前からずっとそうですし、ネット上の書き込みなどを見ていても、ハラスメントやクレイマーなどの問題も、やっぱり同じことを感じます。

相手の事情は考えず、その意見は聞かず、自分の考えを一方的に主張して、相手を罵倒したり強引に丸め込もうとしたり、要は建設的な議論や合意形成をしようとしない態度が多いと感じます。

 

企業の組織運営において、力関係に基づいた一方的な命令や強制では、結局人材が定着せず、生産性は上がらず、よって業績にも悪い影響しかないということで、今はそれぞれの多様な考え方を認めた上で、お互いの合意形成や納得性を重視した組織運営を進める動きが活発になっています。

「いいから黙って言うことを聞け」という発言をするようなリーダーでは、一時的には従っているように見えるメンバーたちも、いずれ辞めてしまうか無視されるかで、結局は誰もついてこなくなります。

 

この「エンパシー」について、日本人は比較的この能力が高いのではないかといわれるそうです。実際の企業の現場を見ていても、例えば若手社員の態度が理解できない管理職の愚痴や、上司の古い考え方を批判する部下の話を耳にすることはありますが、みんな自分の主張だけを一方的にぶつけることはなく、それぞれ相手との接点を見つけながら仕事をしている人たちがほとんどです。無意識かもしれませんが、エンパシーはしっかり実践されていることが多いと感じます。強引な頑固おやじのような人に、仕事で出会うことは少なくなりました。でも、仕事から離れたところでは、このエンパシーが失われていることが増えたと感じるのは気のせいでしょうか。

 

人間同士が一緒に働いたり生活したりするには、相手がどんな価値観を持っていても、それをいったんは認めた上ですり合わせていかなければなりません。しかし、そんな多様性を否定する言動は相変わらず聞きますし、見下した態度、一方的なクレームや暴言、さらに誹謗中傷など、目に余るものは増えています。

 

相手に共感する姿勢が薄いように見えるのが増えたことは、最近特に気になっています。

 

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