企業の一般的な人事制度や評価制度には、社員のモチベーションアップにつなげるという目的がありますが、制度でできることには限界があります。制度の中に組み込めるのは「外発的動機付け」に偏ってしまうという点です。
「外発的動機付け」とは、行動する要因が外部からの刺激によるもので、人事制度でいえば昇給や昇格、役職任命、賞罰、金銭的なインセンティブなどが該当し、その効果は一時的にとどまると言われます。
これに対する「内発的動機づけ」は、本人の内面的な興味、関心、意欲といったものが行動要因となるもので、持続的な効果が得られるとされ、最近重視されている1on1ミーティングのような個別面談や、個人のキャリア形成を支援するような取り組みは、このあたりの効果を期待したものです。
ただ、個人の志向は多様であり、仕事との相性、会社との相性、上司や同僚との人間関係など、様々な要素も絡み合うことから、取り組みがすべてうまくいくとは限りません。上司の能力に左右されるようなところも多く、運用上の難しさはありますが、それでもこういった取り組みをする意義は十分にあるでしょう。
従来からの「外発的動機付け」による人事制度は、言い方を変えると「上昇志向や競争をあおる仕組み」というところがあります。その結果として、上昇志向の強い人、競争するのが好きで得意な人が勝ち残ります。勝ち残るとは「組織の重要なポジションにつく」ということですが、この上昇志向が強くて競争心のある人が組織のリーダーに適任かというと、残念ながらそういうことではありません。
上昇志向の強いリーダーは、自分と反対に上昇志向が薄い者を「意欲がない」「無能」などと見下す傾向があります。競争には必ず勝者と敗者がいますが、本人が勝ち続けて昇りつめたような人は、敗者の気持ちはわかりません。様々なタイプの人を受け入れて活かす意識が薄いように感じるところがあります。
能力が高いメンバーがいても、それを受け入れるというよりは、ライバル視して抑えつけることがあります。明らかに自分が優位であればよいですが、肉薄されてくると潰しにかかるような人もいます。
そういった行動に対して本人は意外に無意識で、条件反射的に反応していることがあります。負けたくないという本能が、そうさせてしまうのかもしれません。
また自分の上昇志向が満たされると、そこから急に行動しなくなることがあります。「部長になったのに何もしない」などと批判される人がいますが、それが理由の一つになっていることは確かでしょう。
上昇志向の強さに合わせて主張される実績ばかりを評価して、そのことで組織の重要なポジションを任せていくような仕組みでは、好ましくないリーダーが生まれる懸念があります。
ビジネスに競争はつきものとはいえ、それに長けた人材が良い組織を作るとは限りません。競争が好きでない人、苦手な人の中にも良いリーダーの資質を持った人材がおり、そういう人材が評価される仕組みも必要です。
最近はあえて売上成長を目指さない経営などが注目されたりします。もちろん今までのように業績を追求する会社もあります。結局は「多様性が増している」ということであり、その多様性に対応できる人が、今の時代にふさわしいリーダーではないかと思います。
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