ある会社のマネージャーが、自身の部下に対してこんなことを言っていました。
「わからないことは質問しに来いと言っているのに全然してこない」
「必要な確認をしてくるのが遅い」
とのことです。
そのせいで作業が手戻りで遅れてしまったり、トラブルになってしまったりということがあるそうです。
マネージャーは「早めに質問や確認してくれればいくらでも対応できるのに、積極的にコミュニケーションを取ろうとしないので困る」と言っています。部下がきちんとアクションしてくれれば、避けられるトラブルがたくさんあるのは確かなのでしょう。
一方、そういう指摘をされる部下に話を聞くと、こんなことが出てきます。
「マネージャーはいつも忙しそうでなかなか話しかけづらいし、自分のことで安易に時間を奪うのは失礼だと思う」
「質問しても、まず自分で考えろと言われることも多いので、自分でできるだけ調べて確認して、質問するのはそれからだと思った」
と言っています。
こちらも決して間違った行動とはいえません。マネージャーが言うように、「部下は自分から積極的に、自律的に行動すべき」というのは、間違いなく正論であり、仕事を円滑に進めるためには必要な行動と言えますが、部下が思っている「自分のことはできるだけ自分で解決する」「上司の時間を安易に奪わない」という気遣いにも同じことが言えます。何でもいちいち聞いてくる部下、相手の事情を気にしない部下では、マネージャーはかえって困ることが多いでしょう。
こういったお互いの食い違いは、仕事の中ではいろいろな場面で起こっています。そしてこの食い違いのほとんどで、部下が一方的にマネージャーの感覚に合わせようと努力することで、解決しようとします。
ただ、もしここで、マネージャーの側から質問を求めたり確認をしたりというアクションを取っていたとしたら、この食い違いは少し軽減されたはずです。
また、部下の立場に立って考えれば、上司からの「自分で考えろ」と「早く質問、確認をしろ」というそれぞれの指示は矛盾したものです。自分で考えることを優先すれば時間がかかりますし、早い確認を優先すれば自分で考えることはおろそかになります。混乱してしまうのは仕方がないでしょう。
食い違いというのはお互いの認識違いであり、そのギャップを埋めるためにはコミュニケーションを取って認識を合わせるしかありません。その際はどちらか片方が相手に合わせるのではなく、お互いが歩み寄る方がギャップを埋めるには効果的です。
どちらか一方だけに問題がある状況は確かにありますが、この例のように、どちらも決して間違っているとはいえない食い違いという状況もあります。
どちらも悪くない、お互いが良かれと思った行動にもかかわらず、それぞれの意識に食い違いが生じていることがあります。そこではお互いがそれぞれの認識を確認しながら、それぞれが歩み寄ることを考えなければなりません。
どちらかだけに一方的な問題があるという状況は、意外に多くは無い気がします。
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