最近、リーダーのコミュニケーションに関する様々な記事を目にすることが増え、その反面教師のような形で現首相(退陣が決まりましたが)の様々な行動が指摘されています。
言質を取られないことを最優先にするかのように、質問に答えなかったり、それ自体を制限したりする姿勢は、確かに誠実さに欠けると思います。不真面目な人には見えませんが、コミュニケーションを拒めば周囲から理解されることが難しくなるのは当然でしょう。
また、他人からの意見を聞く耳がないとの指摘もあります。自分が興味のあることしか反応しない、違う意見を受け入れずに恫喝するなどといったことですが、事実がどうなのかは確認しようがないのでわかりません。ただ、同じようなタイプのリーダーは、企業の中でも目にすることはあります。
このタイプのリーダーたちが、自己評価で「他人の話を聞いていない」「意見を取り入れようとしない」と自覚して反省するようなケースは、たぶんほとんどありません。
本人としては、常にアンテナを張って情報収集をしていて、いろいろな人からいろいろな話を聞いていて、そんな幅広い意見を取り入れながら適切な選択、判断をしていると思っています。そういう人に「人の話を聞かない」「聞く耳を持っていない」「頑固で柔軟性がない」などと指摘しても、通じるはずもありません。本人がそんなことをこれっぽっちも思っていなければ、それは仕方がないことです。
なぜそう思わないかと言えば、本人は本人なりに意見を聞こうという意識があって、それを実行している自負もあるからです。
ある会社の社長ですが、社員との食事会や意見交換会と称したイベントをいつもやっていて、社員とのコミュニケーションを重ねている自負がありました。ただ、部外者の私が社員たちを見ていて、決してコミュニケーションがとれている状況には見えません。
一度、意見交換会の様子を見せてもらったことがありますが、社員の意見を聞くというよりは、社長自身が思っていることやマイブームではまっている話を、一方的にしている場面がほとんどでした。時々、社長から社員に質問を投げかけていますが、それまでの前振りで模範解答が見えているような話であったり、あくまで社長の興味の範囲で、社員たちが言いたいこととはかけ離れているような内容だったり、とにかく意見交換をしているという雰囲気ではありませんでした。
社長は「いい話ができた」と満足した様子でしたが、私が感じたままのことを伝えると、とてもびっくりして、何がまずいのか、どう改善すればよいのかといったことを、私に一生懸命に聞いてきました。
きっと人の話を聞いて、それを取り入れようとする姿勢や、異論を受け入れることができる謙虚さも持ち合わせた社長だったのでしょうが、そんな人でもあまりコミュニケーションが取れていない現状への自覚はありませんでした。
やはり自分が意識するだけでは、話を聞く相手は自分が聞きやすい人に偏り、内容は自分の聞きたい話に偏り、雰囲気は耳ざわりが良い話しか出ないものに偏っていました。
やはり、一定以上の立場になると周りが苦言を呈することはなくなり、相当自覚していないと、話をする相手は自分と気が合う人ばかりに偏りがちになります。それでは「話を聞かない」のと同じことです。
「話を聞かない」と自覚している人は少なく、それを自覚すること自体が難しいことです。組織内で立場が上の人ほど、自分と異なる視野を持ったご意見番に、身近にいてもらうことが重要だと思います。
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