「ブラック企業」という言葉が定着してから、もうずいぶん時間が経ちます。
統一された定義はないようですが、厚生労働省がその特徴として挙げているのは
・労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
・賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
・このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
といった内容です。
ブラック企業に対する対義語として生まれたのは、「ホワイト企業」という言葉です。
こちらも明確に定義されたものはありませんが、その特徴としては
・給与が高い
・残業が少ない
・福利厚生が充実している
・有給休暇が取得しやすい
・女性も働きやすく活躍できる
・離職率が低い
などが挙げられています。
世の中のすべてがホワイト企業であれば、それが一番好ましいのかもしれませんが、そうなることはたぶんあり得ません。
また、ブラック企業がなくならないのは、だまされたとか他に選択肢がなかったとか、事情はいろいろあったとしても、結局はそこで働く人がいるからです。こちらも簡単になくすのは難しいでしょう。
その理由として、まず一つは、実在する企業をブラック企業とホワイト企業の二つに単純に分類することはできないからです。
それぞれで挙げられた特徴のすべてに回答するような企業は決して多くはなく、例えば仕事はきつくてパワハラ的だが給料は高いとか、反対に仕事は楽で働きやすいが、業績は低くて給料が上がらないといったことがあります。
「ノルマ」も「目標」と言い換えてしまえば普通のとらえ方となり、その達成度に対する厳しさは一概に言い切れるものではありません。
もう一つは、ブラック企業とホワイト企業それぞれで挙げられている特徴は、その人によって感じ方の違うものが多いということです。「高い」「低い」「多い」「少ない」「充実」「活躍」「極端」「過度」などは、主観によってとらえ方が違う言葉です。労働時間や休暇の取得率には世間一般の指標があるので、それに照らして評価することはできますが、例えば休暇の取得しやすさと言われて、まったく同じ環境でも休みにくさを感じる人からそうではない人まで様々です。休みにくい人にとってはブラックでしょうし、気にしない人にとってはホワイトとなるのでしょうが、その時の業務状況などによっても様子は変わるはずです。
サービス残業についても、基本的には法律違反なのであってはならないことですが、特に中小企業では、過去からの経緯などで、社員も特に不満を持たずに納得して従っていることがあります。実質的にはブラック企業かもしれませんが、働いている人たちはあまりそうとは思っていません。
こうやって見ると、ほぼすべての会社は、ブラックとホワイトの中間のグレーなところに位置していることになります。大手の優良企業でもどこかにブラックな要素を持っていることがあるでしょうし、ブラックだと批判されるような企業でも、どこかにホワイトな要素を持っていたりします。
大半の企業はブラックとホワイトだけでは分けられないグレーな職場です。また、そのとらえ方が人によって異なるということで言えば、周囲の評判や噂だけでは、自分にとってブラックかホワイトかという判断はつきません。
転職に際して「ブラック企業の見分け方」などの情報がありますが、あくまで自分なりの基準で見極めることも必要です。
どんな企業にも、ブラックさとホワイトさが必ず共存しています。
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