2016年5月18日水曜日

「天狗になる人」より扱いが難しいかもしれない「卑下する人」



いくつかの会社で、コンサルティングの一環として、人事評価面談に立ち会うことがあります。上司の面談のしかたをみて、後からアドバイスしたり、第三者が立ち会うことで一方的な評価にならないように仕向けたり、他社の事例などを引き合いに話すことで、評価の納得性を高める助けにしたりということが目的です。

本人の自己評価と上司評価を突き合わせて面談する会社が多いですが、高い自己評価をつけてアピールしようという人を見かける一方、ごくまれに、極端に卑下した自己評価を出してくる人がいます。

もう5、6年前になりますが、ある会社で全評価項目をすべて最低点でつけてきた人がいました。上司は何度か、もっと客観性を持った評価に直すように指導したようですが、面談時は結局そのままの自己評価で出てきていました。

本人に話を聞くと、とにかく「自分は何もかも不足していて、評価されるに値しない」「評価基準に達しているものは一つもない」と言います。確かにものすごく優れているとは言えないし、みんなをリードして引っ張っていくタイプでもありませんが、等級に見合った標準的な能力と、決して最低ではない成果もあります。
納得しない本人を説得して評価を引き上げるという、ちょっと不思議な面接になってしまいました。

また、別のある時、この会社で残業削減を図ることとなり、まずは事前申請と承認の強化という施策を取ることになりましたが、ある日前述の「卑下する人」がサービス残業をしていることが発覚しました。

会社や上司の強要は一切認められず、無理な作業量もなく、どうも本人の意思で、自ら進んでサービス残業をしていたということでした。
理由を聞くと、「時間内に終わらせる指示を守れないのは自分の能力不足」「会社に迷惑をかけているので残業代はもらえない」と言います。しかし、これはいくら本人が良くても、結局は法律違反で会社の責任になります。

そういう話をして納得させましたが、しばらくたってから今後は、どうも家に仕事を持ち帰っているらしいことがわかります。
「かえって会社に迷惑をかけることになる」と再度注意し、その後はルールを守るようになりましたが、上司はまた何かやるのではないかと気が気ではありません。

自己評価が高くて「天狗になっている人」は困りものですが、その行動や態度は目につきやすいのではないかと思います。気になることはすぐに発見でき、注意も指導もできます。
一方、今回挙げた「卑下する人」の行動は、相当に注意していなければ見つけられません。課題が潜在化してしまうことで注意する機会もなくなり、本人には悪気がないということで、さらに見つけづらくなります。

一見すると、「天狗になる人」よりも「卑下する人」の方が従順そうに見え、扱いやすいと思われるかもしれませんが、行動が見えづらいということで考えると、実は「卑下する人」の方が扱い方は難しいと思います。
めったに出会わないタイプの人かもしれませんが、こんなことも起こるという心の準備はあっても良いと思います。


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