2016年5月27日金曜日

他人の残業は無駄で、自分の残業は必要・・・?



少し前の話になりますが、ある会社で「残業を減らすにはどうしたら良いか」というテーマで社員のヒアリング調査をしたことがあります。

それを実施した理由は、必ずしも良い解決方法を見つけたいというほどのことではなく、どちらかといえば、社員にお題として与えて自分たちで考えてもらい、そこから当事者意識を持たせることで、それが個々の残業削減に向けた動きにつながるのではないかと考えたということです。

そのヒアリングの中でのことですが、「なぜ残業が減らないのか」という質問をしていて、その答えとして最も多かったのは「みんな生活残業をしている」というものでした。

大して忙しくないのに、残業代が欲しいから仕事を引き延ばして残っている者が大勢いるといいます。人によっては「例えばアイツが・・・」などと個人名を挙げます。「休日出勤しているくせにのんびりくつろいでいる」「年中喫煙ルームに行っていて、仕事をしていない」などと、働いている様子への批判もあります。

ただ、そういう人たちに自分自身が残業になってしまう理由を尋ねると、ほぼ全員が「仕事量が多くて終わらないから」といいます。帰れるならば帰りたいが、仕方がないのだそうです。中には、自分の仕事の進め方次第でもう少し改善できる、という人はいましたが、それは圧倒的に少数派です。

つまり、「自分以外の他人の残業は無駄が多くて非効率だ」と見ていて、その一方で「自分は精一杯の仕事をしており、必要以上の残業はしていない」と思っているということです。他人のことは厳しく見ている割に、自分の働き方への問題意識はあまりありません。

ヒアリングで思いがけず明らかになったのは、「残業が減らない理由の一端」です。自分の働き方は少なくとも人並み以上で、それなりに効率的に仕事をしていると思っている人が、今以上に働き方を工夫して時間を短縮しようなどと思う訳がないということです。予想以上に当事者意識はなかったということでした。

この時におこなった対策は、結局はそれほどの工夫もなく、一方的に時間制限をしてその中で終わるように仕事をマネジメントさせるというものでしたが、本来はもっと自律的な提案や活動を期待していたものの、それが難しい実態がわかってしまったので、こういうやり方くらいしか実施できなかったということです。

残業というのは、確かに常習者のような人もいますし、時間数は人によってまちまちですが、そのほとんどの人は、「自分の仕事は非効率」とは思っていません。終業間際の作業指示も、エンドレスの会議も、それをやっている本人にとっては普通のことであり、仕事上必要なこととして疑問などは持っていません。

最近はあらかじめ決めた時間で強制的に消灯したり、退社させたりするような施策を取る会社が増えましたが、こういう様子から考えると、実は有効な方法なのかもしれないと思っています。


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