「働き方改革」の一環として、農林水産省がこれまで利用してきた文書作成ソフトをジャストシステムの「一太郎」からマイクロソフトの「ワード」に統一する方針を決めたという話題がありました。
「一太郎」をまったく知らない人も多数いるようですが、90年代前半にシェアを誇っていた文書作成ソフトで、その後マイクロソフトとのシェア争いに敗れ、2000年代にはほとんど見かけることが無くなっていたものです。
これを報道していた記事には「ワード導入を“働き方改革”とは言わない」「一太郎なんて久しぶりに聞いた」「まだ使っているとは知らなかった」など、時代錯誤を揶揄するようなネットの書き込みが多数あったとされていました。
私もこの記事を見たときは、呆れたというか、思わず鼻で笑ってしまった感じでしたが、同じような印象の人はたくさんいたのでしょう。
なぜそうなっていたのかという考察もされていて、「他省庁と比べて農水省は外部とのやり取りが少なく閉鎖的」「高齢者中心の農業団体などとのやりとりが多く、新しいものへの切り替えに躊躇した」などというものがありました。
実はこの農水省を笑えないような、古い物をいつまでも使い続けて、それが非効率の元凶になっているような会社は、今までずいぶんたくさん見てきました。
今でも手書き帳簿で会計処理をする経理責任者は、「これが一番実務を覚えられる」と言っていました。システム導入の提案があっても断固受け付けません。
でもミスが多く、時間も労力もかかるので、経理事務員は大変です。あまりに旧態依然のやり方なので、常に退職者が出てしまっていました。
ある会社では、導入していたメールの使用を禁止しました。直接コミュニケーションをとる頻度が少なく、何でもメールで済まそうとすることが許せない社長による指示です。
そう思ってしまう気持ちもわからなくはないですが、あくまでコミュニケーションツールの使い分けの問題であり、禁止という極端なやり方は、仕事の効率から言ってもあまり得策ではありません。
ある任意団体では、高齢者の比率が高いため、メールアドレスを持っていない、もしくは使えないという人が関係者の半数近くおり、連絡事項は未だにファックス、会合の出欠確認は往復はがきを使っています。やむを得ないのかもしれませんが、事務局の人の愚痴が耳に残っています。
こういう会社や組織に共通するのは、責任者が高齢などの理由で新しいものに順応できなかったり、中には嫌悪している人がいたり、古いやり方を過大評価していたりすることです。
もっと単純に言うと、経営者や管理者、責任者等の上位の職制の人が、新しいものを「苦手」「嫌い」で、その改革を阻む防波堤のようになっています。
確かに古い物、古いやり方には、それなりの意義やメリットはありますが、会社の仕事は伝統工芸ではありませんから、その優先順位は低いものです。新しいものを拒む人は、予算の問題や能力開発の意義など、いろいろもっともらしい理由は言いますが、結局は自分が「嫌い」「苦手」と思っているだけのことです。
特にIT技術の進歩は目覚ましく、この新しいものを利用しない手はありません。
ただ、文書作成ソフトを切り替えるだけで一大事になるような組織風土では、なかなか難しいことなのかもしれません。
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