2018年2月23日金曜日

「裁量労働制」を“良い働き方”にするために



「裁量労働制」の適用範囲を拡大するための国会論議で、「一般の労働者よりも労働時間が短くなる」との根拠とされたデータに誤りが見つかり、首相が謝罪するという事態になっています。それでもこの法案はそのまま提出する方針だそうです。早く決めたいと焦っている感じが心配です。

この裁量労働制は、「労働時間が減る」「時間に縛られない」「裁量が増えて働きやすくなる」などといいますが、私はそう単純なものではないと思っています。
例えば、私たちのような独立コンサルタントは、働き方としては「裁量労働制」のようなものです。ただし、それで働く時間が少なくて済むかといえばそうではありません。無条件に時間を拘束されることは確かにありませんが、納期や期限、決められた成果物は常にありますので、その点の縛りは必ずあります。

それでも私は、それなりに良い働き方ができていると思っています。それが成り立つのは「その仕事をやるかやらないかは自分で決められる」ということがあるからです。また、それを「交渉する余地」があり、折り合わなければ契約をしないだけのことです。報酬額、期限、稼働時間、仕事内容などを総合判断して決めますが、その時の状況によって自分の基準は変わります。
逆に言えば「断る自由」しかないとも言えますが、それは働く上での裁量としては、とても重要なことです。

しかし、企業で働く人の「裁量労働制」となると、基本的にこの「断る自由」がありません。条件を「交渉する余地」もほとんどないでしょう。日々の仕事の進め方にしても、本来ならば上司からいちいち指示されることはないはずですが、そこは結構普通に「いつまでにこれをやれ」のような指示をされて、現実的に働く人の裁量で進めることはほとんどできないというような状況が、数多くあります。

実際に、今でも裁量労働制を悪用する会社が後を絶たず、この問題を専門に扱うユニオンもあるようですし、さらにその適用範囲を拡大するとなれば、裁量が持てない人が裁量労働制の扱いにされてしまうことが考えられ、今まで以上に問題が大きくなる懸念があります。「定額働かせ放題」などといわれるような状況が、どんどん拡大しかねません。

私は自分が「裁量労働制」のようなものだということもあり、導入すること自体に反対ではありません。やり方次第で良い働き方にできるからです。ただし、そのためには「断る自由」と「交渉する余地」は絶対に必要な部分です。

ちなみに「定額」といって思い出すのは、携帯電話の料金プランですが、かつてはすべて一律のデータ量だった「パケット定額」も、現在は使用できるデータ量上限によって料金が異なる形になっています。やはり根拠のない「一律定額」では、初めは良くてもいつか運用に耐えられなくなるということです。

「働き方改革」が成長戦略に位置付けられ、経済成長を目指すものである限り、そこで議論される「裁量労働制」は、どうしても「残業代を払わなくて済む人」の拡大に意識が向いている感じがしてなりません。
無理した「定額制」はいつか必ず破たんします。良い働き方になり得る「裁量労働制」ですから、それにつながる議論がされることを望んでいます。


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