2018年2月26日月曜日

超氷河期と売り手市場で変わったことへの中小企業の感じ方の話



ある就職情報会社の調査データの中に、「就職氷河期の学生と売り手市場の学生の比較」というものがありました。
超氷河期といわれた2010年卒の学生と、売り手市場となった2017年卒の学生を比較しており、それによると、「就職先を選ぶ基準は何か」という設問で変化が大きかった答えとして、2010 年卒の1位は「仕事内容が魅力的」が41.1%でしたが、2017年卒では、これが23.5%で17.6ポイント減の7位と、大きく順位を下げています。

他にポイントが下がった項目は「高いスキルが身に付く」が8.9ポイント減、「企業理念に共感できる」が8.3ポイント減などで、 逆にポイントが大きく上がった項目は「休日・休暇が多い」で13.2%から26.5%へと倍増し、ほか上位は「将来性がある」「給与・待遇が良い」「福利厚生が充実している」となっています。学生の関心は、仕事やキャリアから条件面に移っているようだとコメントされていました。

この話を特に中小企業の社長の皆さんにすると、何となくがっかりした感じになります。「やっぱりそうか」などと言って、「みんな大きい会社の方がいいんだよな」などと言います。
最近の人手不足の中で、人材確保に苦戦する中小企業はたくさんあります。中小企業が特に待遇条件で大企業に太刀打ちするのは難しく、それ以外の面でいかに価値を感じてもらうかが勝負の分かれ目ですが、この調査はその武器が通用しなくなったような、そんな気持ちを反映したちょっとの愚痴や嘆きが入った言葉なのだと思います。

私も中小企業の採用支援を数多くしている立場から、その気持ちは痛いほどよくわかります。苦労して、自社なりに最大限の投資をして、それでも振り向いてくれる人がいないという状態は、当事者にとってはとてもむなしいものです。

ただ、ここで一つ冷静に考えてみると、中小企業が採用に苦戦するのは今に始まったことではありません。程度の違いはあっても、大企業と比べてしまえば常に不利だったことは当然であり、楽勝だったと言い切れることはたぶん一度もありません。

もう一つ、過去の様々な調査結果を見ていてわかるのは、売り手市場になると給料や休日休暇、福利厚生といった待遇条件の優先順位が上がり、そうではない不景気の時期になると、企業規模を問わずに仕事内容を吟味し、自分のスキル意識が高まる傾向が明らかにあります。
つまり、すべてのことは外部要因であり、自分たちの力だけでどうにかできるものではないということです。ただし、そういう環境だから何もしなくて良いということではなく、与えられた環境の中で、最大限にできることは何かを考えて実行するしかありません。

待遇で大企業と張り合うことはできなくても、自分たちができる最大限の待遇を生み出すためにはどうするかを考えるしかありません。やはり業績を上げなければ待遇アップはできませんし、企業の魅力も打ち出すことはできません。

外部要因を一喜一憂しても、そこから生まれるものは何もなく、自分たちにできる範囲の「企業価値の向上」に取り組んでいくしかありません。

ある福祉関係の事業所で、人材採用ができないことへの嘆きから、「不景気になればいいのに」という声があったという話を聞きました。そうでもならなければ自分たちの事業所の人手不足は解消しないということでしょうが、本当に不景気になったら自分たちの収入も減る可能性がある訳ですし、事業所自体の安定も厳しさは増していくはずです。それは、いまそこで働いている人たちにとっても、何一ついいことはないはずです。

どうにもできない外部要因に一喜一憂せず、自分たちにできることを地道に続けることが、物事が好転する可能性が一番高い行動ではないかと思います。


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