ある学習指導教室の先生ですが、小学校低学年くらいの子供たちも教えています。この先生はその子供たちが課題をやる時のプロセスをとても良く見ています。
典型的なのは「漢字の書き順」で、これは結果だけ見てもあっているかどうかは絶対わかりません。きちんとその子が作業している様子を見て、違っていたらその場で指摘しなければなりません。
一度言ったからといって頭では理解していても、見ていないとまた自分が楽で慣れた元の間違った書き方に戻ってしまいます。繰り返し指導して直ったことまで確認しなければなりません。
ただし、先生の中にはそこまで細かく見ようとはしない人がいるそうです。理由は単純に面倒だからだろうということです。
子供たちというのは初めは単に間違って覚えているだけで、早いうちに指摘すればすぐに直せますが、それをずっと見逃して癖になって身についてしまうと、そこから直すのは大変になります。ここで、間違っている子供たちが、細かくプロセスを見ない先生につくと、直すことが難しくなる子供が増えてしまうことになります。
直すことに時間がかかるということは、それだけ他のことを学ぶ余裕がなくなるということで、いろいろな意味でどんどん遅れて行ってしまいます。とにかく「初めのうち」に「きちんとプロセスを見ること」が大切だとおっしゃっていました。
これを企業での教育に当てはめてみるとどうでしょうか。たぶん「新人教育」が一番基礎なので、そこでしっかりプロセスをチェックして学ばせるのが一番効率は良いでしょう。
ただ、「新人教育」で教えるよりも、もっと基礎の礼儀や言葉遣いなどの場合、もうすでに間違ったものが身についていると、それを直すのは大変です。だいたい企業の教育担当はこのあたりを嘆くことが多く、「小学校とか家庭とかで、もっと子供の頃から教えておいてほしい」などといいます。
この話は、企業で聞くと「学生のうち」と言い、大学教授に聞くと「高校生以下で」と言い、高校の先生は「中学以下で」、中学では「小学校で」、最後は「家庭で」となっていきます。みんな自分たちのところに来る前にやっておいてほしいということです。
ただ、そうやって人にせいにしていても何も変わりませんから、結局はその時の当事者がやるしかありませんが、やはりここでも「プロセスを見ない指導者」が出てきます。能力があって基礎がすでに身についている人を細かく見続ける必要はありませんが、中には基礎がない人もいます。それは社会人にも当然います。
まっさらな状態で来る人は、きちんとプロセスを見て基礎から教えれば、もちろん能力差はありますが、ある程度効率よく身についていきます。しかし、プロセスを見ないで放置していると、俗にいう「下手を固める」の状態になります。直すのに時間がかかり、場合によっては直せなくなることもあります。
最近思うのは、この「プロセスを見ない指導者」がいろいろなところで増えていることです。これはもちろん会社でも同じです。他人のことにはあまり立ち入らないという個人主義的な感覚のせいかもしれませんが、初心者を教える時ほどプロセスに立ち入って見なければなりません。それができない人は、少なくとも初心者の指導には向いていないということになります。
幼児、新入生、新入社員などの初心者を教えるには、指導者を誰にするかという選択が、実は非常に重要です。プロセスを見る根気がある指導者を選べば、その後のことが効率よく身につくようになります。何事でも指導者の人選は大事です。
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