2020年9月10日木曜日

賛同されない「謎マナー」はいずれなくなる

少し前、リモート会議ツールに「画面上で上座、下座に並べられる機能が欲しい」という要望があるとの話題がありました。

「くだらない」「不要」などと批判されていましたが、よく利用される会議ツールのZOOMに、参加者の並べ替えができる「カスタムギャラリービュー」という機能が追加され、これが「上座機能」などと言われて、「またマナーが煩雑になる」「管理者が苦労するのでは」「そもそも画面の上座ってどこ?」などの、批判的な書き込みが見られます。

 

ただ、この「カスタムギャラリービュー」ですが、実際に使ってみると、画面上の参加者の表示位置をドラッグアンドドロップで好きな場所に移動できるだけのことで、別に「上座」の要望に応えたものではなさそうです。メインスピーカーがいるミーティングや、主賓がいるような集まりでは結構便利そうで、これを「上座機能」と言ってしまうのは、ミスリードだと思います。

ただ、この機能のせいで、会社によっては「社長を真ん中に配置するように」などと、余計な指示が出される可能性はあるので、気になる人はいるのでしょう。

 

この「上座機能が欲しい」という話は、少なくとも私は実際の現場では聞いたことがありません。実際にあったとしても、ごく少数派の話が大きく誇張されて伝えられたのではないでしょうか。ただし、「うちの会社、うちの上司は言いだしそう」など疑心暗鬼になる人は、結構大勢いるのかもしれません。

 

この手の話は「謎マナー」などと言われて、実際にやられているのかいないのか、よくわからないものがたくさんあります。

代表的なものは、社内文書で複数の人が押印するとき、上司にお辞儀をしている左斜めに傾けて押すという「お辞儀ハンコ」ですが、こんな話は聞いたことがないという人から、研修で教えられたという人まで様々です。実際にやっているところはあるのでしょうが、果たしてマナーにあたるのかはよくわかりません。

他にもお酌のしかたや、メールの使い方などの中には、「これは本当にマナーなのか」と思うものがあります。これを相手から指摘されたりすると面倒ですが、本人はそう思い込んで真面目に言っていることなので、仕方ないところもあります。

 

私はこの手の「謎マナー」には、別に従う必要もなく、さらにどうせそのうちなくなってしまうものだと思っています。マナーの本質は、相手を思いやり、お互いを尊重して、気持ちよく過ごすためのもので、これらはそこから外れているからです。価値観の押しつけや強要といった行為も、本来はマナー違反となります。

リモート会議の「上座」の話でいえば、一部の上司はそれで気分が良くなるのかもしれませんが、他の人にとってはどうでもよいか、逆にマイナスの感情を持つ人もいるでしょう。マナーの本質からは外れています。

 

さらに、こういう会社は、他のことでも似たようなしきたりを持っていることが多く、社員にとっては様々な息苦しさがあります。このような「上司が優先の会社」は、昨今は働きづらい職場として、敬遠される傾向にあります。

これをそのまま続けていれば、いずれ働く人がいなくなって会社は消滅、それが嫌ならこういう文化をあらためるしかありませんが、どちらにしても「謎マナー」はなくなります。

 

また、マナーは時代とともに変わります。「お辞儀ハンコ」は、ハンコをたくさん並べるような書類が、今後はどんどんなくなるでしょうから、いずれは誰も言わなくなります。

メールやチャットツールなどに関するマナーも、技術の進化に合わせて徐々に変わっています。みんなに受け入れられる合理的な理由があった上でそうなっています。

 

多くの人が賛同しない「謎マナー」は、どうせ長続きしませんし、いずれなくなります。無駄、不快と思われた時点で、もうマナーではありません。あまり憂鬱に考えなくてもよいのではないでしょうか。

 

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