2020年9月24日木曜日

あらためて考えた地方企業との事情の違い

このコロナ禍で、出張をはじめとした移動はずっと先延ばしにしてきましたが、最近は多少落ち着いてきたという判断で、久しぶりにある地方都市の企業を訪問してきました。

 

幸いコロナで大きな影響を受ける業種ではなかったため、ほぼ前年並みの業績で推移しているとのことで安心しましたが、それでも小さな影響はいろいろあったようです。そんな話を聞いていると、首都圏の企業とは結構大きなギャップがあることを感じます。

それは危機感や温度差の違いもありますが、もともと前提となっている職場環境や生活環境の違いも、かなり大きい感じがします。最近に言われている「新しい生活様式」は、首都圏で生活しているとその必要性が納得できますが、地方では当てはまらないことがたくさんあります。

 

訪問した企業から聞いた話ですが、やはり社外からの訪問は、緊急ではない限りは断ったり先延ばししたりしていることが多いようで、社員の間で、感染への警戒感と予防意識は徹底されているようです。ただ、地域の感染状況からして、ちょっと気にし過ぎではないかという人は結構いました。街中の店舗などの様子を見ても、首都圏に比べると結構ゆるさを感じます。

 

この会社でも、一部でテレワークを実施したそうですが、その事情は首都圏の企業とはだいぶ違っています。実施したのは、感染拡大時期にどうしても東京出張しなければならなかったごく一部の社員の帰郷時に、経過観察の待機のために実施したということでした。ほとんどの社員は、まったく通常のままの勤務体制で、仕事を続けていたということでした。

 

この会社では、通勤でごく一部にバス路線を使う社員がいるものの、社員の95%以上は自家用車での通勤です。そもそも地域としての生活スタイルが車社会で、自転車に乗るのも高校生くらいまで、歩いて移動することはほとんどないと言っていました。通勤時の密などは、そもそもあり得ない環境です。

 

さらに、基本が職住接近なので、通勤時間は20~30分以内の人がほとんどです。以前、この会社で在宅勤務に関する希望を聞いてみたところ、「家で仕事をするなんてとんでもない」「絶対にやりたくない」という声がほとんどでした。理由は単純で、通勤の負担感がもともとないため、わざわざそんなことをする必要性を感じていないということです。

その頃の首都圏の会社では、「テレワークを希望しても許されない」ということへの不満が言われていました。テレワークへの前向きなとらえ方は、実は通勤負担の軽減に集約されていたのかもしれません。

 

仕事のことからは少し離れますが、この地域の大人はみんな車で移動しており、比較的高齢の人でも自分で運転しています。公共交通機関はとても使い勝手が悪く、そもそも近くに駅などありませんから、車以外に日常の足はありません。

東京周辺では、特に高齢者に免許の返納を勧める動きが顕著ですが、地方の生活環境でそれを言うのはまったく不可能です。よく考えると、車が無くても生活できるのは、実は日本の中では東京くらいしかなく、東京の環境の方がかなり特殊ではないかという感じがします。

 

企業の人事施策にはいろいろな考え方がありますが、こんな地域の事情にも配慮しなければ、効果的な施策は打ち出せません。人事というのは、一般的に言われていることだけでなく、その地域に根差した生活環境までをしっかりと理解しなければ、適切な対応はできないものだとあらためて感じています。

 

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