2014年8月25日月曜日

「一体感」と「多様性」はどちらを大事にすればよいのか


組織作りやチームビルディングの中で、そのグループの「一体感」を醸成することの大切さは、いろいろなところで言われていることです。「経営理念」「行動規範」「目標の明確化」「方向性を示すこと」などは、この一体感を作り出すための道具や手段にあたるのだと思います。

私は人事が専門の立場なので、これらに注目した取り組みが必然的に多くなり、「一体感」を得るために、様々な施策や取り組みを実施します。また、このあたりを重要視する傾向も強くなります。

その一方で、最近はダイバーシティという言葉でも表現される、「多様性」ということの重要性も言われています。私が今まで見てきた組織の中でも、成長が速いところは構成している人材が非常に「多様性」に富んでいることが多いように思います。

年令や性別、国籍や出身地、学歴などの一般的に言われる属性だけでなく、その人の生い立ちやこれまでの経歴、個々の持つ価値観や職業観、性格的な特性など、俗にいうエリートのような人から、苦労人と言われるような人まで、本当に様々な人が在籍しています。またこういう組織では、いろいろな人を自分たちの仲間に迎え入れることができる度量の広さも感じます。

組織作りの中で、「一体感」を作り出すような取り組みを行っていくと、自分たちが気に入った人、気が合う人ばかりを選別しようとする動きが目立ちだすことがあります。主に採用や人材登用の場面で起こってきますが、それが行き過ぎると、誰かをはずす、辞めさせるといった「排除の論理」につながっていってしまいます。これでは「多様性」はどんどん失われていってしまいます。

「一体感」を高めようとすると、それにつれて「多様性」が失われ、「多様性」を求めると、その中では「一体感」が維持しづらくなります。
「一体感」と「多様性」、は、どちらも大切であるとは言われるものの、これを両立することはなかなか難しいことです。

ただ、これが難しいとは言っても、できる限り両立を図る努力は必要になります。
このどちらに重心を置くか、どんな進め方をするかは、その組織規模と現在のステージがどこかによって違ってくると思っています。

例えばスタートアップに近い組織、50名程度以下の小企業であれば、どちらかと言えば「一体感」が大事ではないかと思います。この時期には、構成メンバーの多くが、同じ気持ちで同じ方向を目指すということが、より必要だと思います。

逆に企業規模がそれ以上になってくると、今度は徐々に「多様性」の重要度が増してきます。多様な人材がいることで、対応できる事業内容の幅、顧客の幅などに広がりを持つことができ、これが会社の成長につながります。またこれを実現するために、会社には様々な人を受け入れるだけの器に広さ、度量の広さが求められるようになります。

ただ、会社が大きくなったからといって、「一体感」をおろそかにして良い訳でははありません。例えば30~50名規模は、大企業であれば課から部単位にあたるような人数ではないかと思います。
この単位では「一体感」を高めるような取り組みを行い、一方で課や部の相互の間では異なる性格を持った集団にしていけば、組織全体での「多様性」を維持していくことができます。こんな形で両立を考えていくことになるのでしょう。

「一体感」と「多様性」はどちらが大事かと聞かれれば、どちらも大事だという答えになってしまいます。
ただ、このどちらに重心を置くか、どんな進め方をするかは、その組織の中で工夫していく必要があると思います。


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