2014年8月6日水曜日

下積みはいったい何年が適当なのか


ある企業の人事担当者が書いたブログで、「新入社員が退職した」という記事が、一時期ネット上で話題になりました。

入社10日にして、「アルバイトの延長のような販売の仕事は、ずっと続けていく気にならないし、自分に向かないから辞めたい」と言ってきた新入社員に対して、「社会人の時間は長く定年までは約40年。社会人にとって入社後の10年は、大学で言えば1年生に相当する」と、運動部の一年次にたとえ、「楽しさにたどり着く前に職を変えてしまうから、幸せになれない」「楽しさに至るまでには下積みが必要」と人事が諭す内容でした。

この内容は反響を呼び、その多くは肯定的なものでしたが、中には「面白くないと思っている人に無理やりやらせても辛いだけ」などの批判的な反応や、「変化の早い時代に下積みに10年も費やすのは危険すぎる」という意見もあったようです。年功序列、終身雇用で同じ会社に定年まで勤める前提の「昭和の価値観」だということでした。

確かに「どんな仕事でも下積みが必要だ」というニュアンスには私も共感しますが、それでも「下積み10年」と言われると、必ずしもそうだとは言い切れません。10年はやっぱり長い年月です。

実際に私自身が10年前に考えていた将来のことと、今の現実の状況を突き合わせてみると、その当時に想像できていたことは、かなり少ない感じがします。
私の感性が鈍いのかもしれませんが、変化が激しく予測がしづらい時代であることだけは間違いないと思います。

これはある有名な寿司店の話ですが、今は新卒採用の形で学生を採用し、研修の形で調理に関する技術も学ばせていくのだそうです。
昔ながらの徒弟制度で、先輩がいる限りはそれ以下の下働きの仕事しかさせてもらえず、技術もただ「見て覚えろ」ということが大半では、一人前になるまでの時間がかかりすぎるし、なによりも本人の根気が続かず、途中であきらめて辞めてしまう人が多いからということがあるようです。

会社として考えれば、社員の成長速度が速まれば、それはメリット以外ないはずですが、その成長を本人のセンスや能力だけのせいにしていることが、まだまだ多いように感じます。「センスが無い」「覚えが悪い」などと本人は批判されますが、では会社としてどうやって成長を速めていくのかという働きかけが少ない場面をよく見かけます。

下積み時代は絶対に必要だと思います。また、いったいどこまでが下積みなのかの線引きはしづらく、下積みには長い期間がかかるとの考え方もあるでしょう。
ただ一昔前のように、「本人次第」「見て覚えろ」では、時代が要求するスピードには追い付くことができません。

変化が速い今の時代の会社の中で、「下積み10年」と言ってしまうのは、さすがにちょっと昭和の香りが強すぎるように思います。


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