2014年8月27日水曜日

理解できるが共感できない「うちには来てくれない」と嘆く採用担当


私が採用活動をお手伝いするような企業は、名の知れた有名企業であることはまずありません。優秀な人は欲しいが、なかなか思ったようにはいかない中堅企業から中小零細企業がほとんどです。

また、人の採用に関しては、そのレベルに違いがあるとしても、結果に100%満足と言う話は、企業の規模や有名無名を問わず、ほとんど聞くことがありません。
人の採用には数と質の両面があり、特に質というのは、仕事をさせて初めてわかることが多々あるので、やむを得ないところではないかと思います。

このように、なかなか満足には至ることがない採用活動の中で、特に若手から中堅あたりの年齢層を採用対象にした際に、ときどき耳にするのは「この人はきっとうちには来てくれないなぁ・・・」という採用担当者の嘆きのような言葉です。中には「どうせ大手に行くに決まってる」とか「うちの会社に優秀な人なんて来るわけがない」などというあきらめのような話を聞くこともあります。

苦労して応募者を集め、ようやく内定までこぎつけても、それを辞退されるようなことを繰り返していると、こういう気持ちになるのは良く理解できます。ただし、私はこの言い方にあまり共感はしていません。ある会社では、社長自ら「うちにはこんな人は来てくれないよなぁ・・・」などと言っていましたが、これははっきり言って固定概念による言い訳だと思っています。

確かに一般論として、一流校の出身者などは大手企業を希望することが多いですし、学生の大手志向というようなことも言われます。
ただ、大手企業に入ったからといって、本当にその人の社会人的な能力が高まるかというと、必ずしもそうではありません。私もかつて企業人事として、大手企業出身の人材を受け入れた経験が何度もありますが、なかなかフィットしなかった経験の方が多いです。

これは受け入れる側にも問題がありますし、大手企業人材の全員がそうではありませんが、大手企業の人の方が「会社のおかげ」で仕事をしている部分が多くあることは確かだと思います。

「整えられた仕組みに乗って仕事をする」
「会社の看板で顧客や関係先にアプローチする」
「細かいことは自分以外の誰かがやってくれる」
「周囲から多くのサポートが受けられる」 など、自分の力か周りのおかげかを勘違いしやすい環境があります。

そしてそんな人材が中小企業に舞台を移した途端、それまでできていたはずの仕事が遂行できなくなってしまいます。「あんな人はうちには来てくれないなぁ」などと言われていた、優秀な人材であるはずなのに・・・です。

人材の質には、基礎能力などの先天的な要素があり、これが高いに越したことはありませんが、それ以上に後天的な要素がかなりあると思います。その後天的な要素には、自分で直接かかわって、手を動かした経験が重要になります。俗にいう現場経験であり、自分でストリートファイトができる力があるかというようなことです。

自分の力を勘違いしなかった大手企業人材は、様々な環境の中で、中小企業では経験できないスケールの仕事を自分自身の手で動かしていますが、そうでない人はどんなに基礎能力が優秀であっても、少しの環境変化で職務遂行ができなくなってしまいます。こういう部分まで含めての人材の質ということです。

こう考えてみると、「優秀な人はうちには来てくれない」などと嘆くのは、実は言うだけ無駄で、意味がないことではないかと思います。


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