2016年6月17日金曜日

「日本人は家に帰りたい気持ちが低い」の話に思い当たること



残業削減に関する様々な対策は、多くの企業で工夫と試行錯誤を重ねながら進められています。
裁量労働制やフレックスタイム制、在宅勤務、早朝出勤制、定時消灯、事前申告制にノー残業デー、その他様々なものがありますが、その効果はまだまだごく一部にとどまっている気がします。

そんな中、少し前のあるビジネス誌の記事に「日本人の残業、元凶は『家に帰りたくない』人たち」というものがありました。
その記事には、日本企業で残業が減らない背景に、諸外国にはない二つの事情があり、一つは「残業時間と昇進確率が比例している」ということ、もう一つは「家に帰ってもろくなことがない」と思っている人たちがいることなのだそうです。

一つ目の昇進に関しては、仕事の評価に関する問題なので、まだ対処のしようはありますが、二つ目の「家に帰りたくない」については、記事の中でも、「日本人は総じて『家に帰りたい気持ち』が低いように思われ、会社が仕事量を減らしたり、業務効率化を進めたりしても、それだけでは残業の削減が進まない」とあり、これはなかなかの難問です。

この記事を見て、私も今までの経験の中で、思い当たったことがいくつかありました。
一つは、本当に「家に帰りたくない」と真顔で言い合っていた、当時40代後半から50代の先輩男性たちの姿です。何人かが口を揃えて「奥さんが怖い」と言い、なぜかと聞くと「怒らせると食事を作ってもらえなくなるから困る」のだそうです。自分で料理ができない人にとっては切実な問題なのでしょうか。
家にいても用事を言いつけられるから面倒だし、共通の話題もそれほどないし、何となく居心地が悪いのだそうです。会社にいる方がよほど気楽だと言っていました。

もう一つは、数年前に在宅勤務に関するセミナーをやった時のことです。
出席者に「在宅勤務をやってみたいか?」と尋ねると、半分近い人が「やりたくない」と言います。そのほとんどが男性です。
理由を聞くと、「家では落ち着いて仕事ができない」「公私のけじめがつかない」「他の社員とのコミュニケーションがとりづらい」「顔を合わせて仕事をしないと効率が悪い」など、仕事に関する一般的なものとともに、「会社に行くという最も正当な外出理由を奪われるのが嫌だ」というものがありました。「会社」「仕事」というのが、いちいち説明する必要がない、どこに行くにも一番詮索されなくて済む理由なのだそうです。

最近は家族と過ごす時間を大切にする人、家事メン、育メンといわれる家事や育児を積極的に分担しようという男性などが増えてきています。共稼ぎが増えているという家庭環境の変化のせいもあるでしょう。
しかしその一方で、「家の居心地が悪い」「家に帰りたくない」と考える人が、一定数いることも確かなようです。どちらかと言えば、子供が成長して巣立っていく時期の家族関係が変わりつつある世代、会社であれば上級の管理者にあたる世代の方が、こんな気持ちになりがちなのではないでしょうか。

記事には、「帰ってもろくなことがない」といって残業する社員を自主的に帰宅させるようにするには、「残業する方がもっとろくなことがない」ようにするしかないとありました。
ある会社では、残業の事前申請と事後の説明レポート提出を義務づけ、初めは過剰なくらい徹底的にレポートを添削して、何度も書き直しをさせたそうです。社員には相当な不満があったようですが、「こんな思いをするくらいなら」と、定時内に必死で仕事を終わらせるように、徐々に変わっていったそうです。

いずれにしても、長時間労働抑制や残業削減というテーマは、ちょっとやそっとのことでは変えられない、一筋縄ではいかない取り組みだということは確かなようです。


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