2016年6月8日水曜日

経営陣と社員に壁を作ってしまった、周囲の過剰な気遣い



もう数年前になりますが、ある会社の社内懇親会に参加させて頂いたときのことです。私はそれほど深いお付き合いの会社ではありませんでしたが、少しだけ仕事上のつながりがあり、その時の担当者から招待して頂きました。私以外にも取引先の方など、社外の人が数名いらっしゃいました。

参加者は50~60名くらいの宴会で、社長、会長、専務に事業部長が2名の、計5名がメインテーブルにいらっしゃり、この方々が経営陣の中心のようでした。

ちょっと違和感があったのは、その5名に対して一人ずつ、若手社員がお世話係のように付き添っていることでした。社内の宴会で、別に一人一人に付き添う必要はないように思いますが、たぶんそういうしきたりで、今までそうやって流れてきたのだろうと思います。

経営陣の方々は、特に威張っている訳でも傲慢な訳でもありませんが、周りが世話を焼いてくれますから、いろいろ用事を頼んでいますし、気遣ってもらっているのでリラックスできるのか、それなりにご機嫌の様子です。

ただ、この経営陣の方々と、それぞれの社員の様子を見ていると、その間にはどうも壁があるように見えます。社員の方々は自分から挨拶に来ますし、会話は交わしていますが、世間話で長続きするような話ではありません。一度話せば義務は果たしたという感じで離れていき、もう二度と近寄ってきません。

社長などをはじめとした上席者に対するこの手の気配り、気遣いというのは、当事者が強制しているようなことはほとんどなく、周りの誰かが気を回したところから始まっていることがほとんどです。それがいつの間にか社内のしきたりになっていたりします。

ただ、このような上席者に対する特別な気配りや気遣いは、その度合いが大きければ大きいほど、一般の社員との間に心理的な壁を作ります。本人たちは威張ってもいないし、普通にしているだけなのに、社員との距離は広がっていきます。

これを解決する方法はとても簡単で、経営陣や役職者、上席者の側から「過度な気遣いは不要」「もう止めてもいいよ」と宣言して実行するだけのことです。ただ、気遣いを受けている側は、壁ができていることや、距離が広がっていることを自覚するのは意外に難しく、これが実行されることはあまりありません。

これは別の会社の例ですが、社内の宴会では社員の日ごろの働きをねぎらいたいということで、社長と役員数人は、必ずバーカウンターに入って社員に飲み物のサービスをするというところがありました。そもそもは、みんなが集まってくるバーカウンターにいれば、いろいろな社員と話せるだろうという社長の考えからだったようです。
もともと上下の壁はあまりない会社でしたが、社長自らが社員のお世話をすることで、さらに壁は低くなり、会話しやすい雰囲気も生まれていました。

組織の中で、上下のケジメは確かに必要ですが、フラットな上下関係の中で育ってきた世代が増えてきている中では、それが行き過ぎていてはデメリットの方が大きくなります。
また、上下の間に壁があったり、社員との距離が広がっていたりする原因は、必ずしも本人の行動に関係することばかりではなく、そのせいで自覚しづらいこともあります。

それでもこういう場合は、上の立場の人が自分から気づいてアクションしなければ、なかなか解決はできません。
上席者である方々は、今一度「自分が過度に祭り上げられていないか」「チヤホヤされ過ぎていないか」を気にしてみる必要があると思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿