2017年2月24日金曜日

労働時間対策の手厚さを見て思う、それができる会社とできない会社の格差拡大の心配



「働き方改革」に関する取り組みを紹介する新聞記事の中で、いくつかの会社の事例が紹介されていました。

労働時間の短縮、定時退社を促す取り組みとして、こんなものが挙げられていました。
・18時の強制退社日が定められていて、上司の許可がなければ部屋の電気が強制的に消灯される。他の日は20時で同様の対応が実施される。
・毎朝無料のモーニングサービスが振る舞われ、朝型勤務へのシフトを促している。
・各自が毎月の残業時間や休暇取得を1年間計画し、チーム共有することで業務負担の偏りを防ぐ。
・高効率の工作機械導入や、仕事場近くにトイレを移して移動時間を減らすなど、多額の設備投資をする。
・月間の残業時間がゼロだった社員に「ノー残業手当(1万5千円)」を支給する。

ある食品大手企業は、人材獲得への強い危機意識を持っていて、特にグローバルで働ける人材が選ぶ他企業と比べて、働き方が国際標準に劣っているという問題意識があり、長時間労働の削減に取り組まなければ人材獲得ができないと考えているとのことです。

こういう取り組みが進んでいくのは、基本的には歓迎すべきことだと思いますが、私の正直な感想は「ここまで手間ひまをかけて手厚い取り組みをしなければ、労働時間を減らすことができないのか」ということです。
私は、もっと個人レベルの意識改革で進められる要素が多いと思っていましたが、実際にそれではまったく不足だということで、このような数々の取り組みが行われているのでしょう。

ただ、こうなってくると心配なのは、ここまで手厚い対応をしなければ労働時間短縮ができないのだとすれば、それができる企業とできない企業の間で、どんどん格差が広がってしまうのではないかということです。

この新聞記事で紹介されていたのは、みんなそれなりの規模の有名企業でしたが、そういう会社であれば、専任できるスタッフを配置することができ、効率化のために様々な投資するだけの資金も持っています。

一方、その他大多数の中小零細企業ではそうはいきません。そもそも人、モノ、金という経営資源のどれか、もしくはそのすべてが不足しているような会社がほとんどです。
ギリギリの人数で何とか収益を確保しようとしているような会社も多く、時短どころか有給休暇を消化させることすら難しいような状況が多々見られます。
良い設備や機械があることは知っていても、それに投資するだけの余力がありません。新しい手当を支給することなど、採算の見込みがなければできるはずもありません。

こうなると、労働時間をはじめとした働き方の部分でも、また企業間格差の問題が起こってきます。人材がいて投資ができる会社ではそれらの対策がどんどん進み、それができない会社はどんどん取り残されていくという現象です。
「働き方改革」という課題の中では、あまり意識されていないかもしれませんが、このままでは大企業優遇とか、弱者軽視と言われる結果になりかねません。
労働時間対策につながるような設備投資や、関連する取り組みを支援する制度もいくつか出てきているようですが、それだけではまだまだ足りません。

このままでは、手厚い対策ができる会社は今までのさらに上をいき、できない会社はまったく進展がないというように、企業間の格差がますます広がってしまうのではないかと懸念しています。
努力をする気がない会社は仕方がありませんが、努力をしたくてもできない会社が出てきてしまいます。
「労働時間対策」のこれからの進展のしかたをとても心配しています。

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