学生の就活ではここ数年売り手市場が続いていますが、そんな中で学生の「大手企業志向」が高まっていると言われています。様々な調査結果を見ていても、その傾向がうかがえます。
なぜ学生が大手志向になるのかという理由としては、「売り手市場で大手企業にも入りやすいから」「ビジネスのスケールが大きいから」といったものとともに、「大手企業は安定しているから」という昔ながらの理由が挙げられています。
大手企業ならよほどのことがなければ倒産を心配する必要がなく、先行き不透明で不安なことが多い世の中の状況から、就職後の安定感を求めて「大手企業志向」は高まっているそうです。
ただ、最近はこの「会社の安定」が、必ずしも「個人生活の安定」にはつながらなくなっています。
確かに少し前であれば、終身雇用が確立していて、大手の安定した会社に入ってそこで働き続けようと決意すれば、倒産して会社がなくなる心配もなく、肩たたきにあうこともなく、それなりの給料を得ながら必要十分な生活をすることができました。
しかし、最近は終身雇用の崩壊が言われ、好業績であっても希望退職を募ったり、退職勧奨をおこなったりする大手企業の話をよく耳にします。さらに表沙汰にならないところでも、社内で余剰とみられた社員に対して、退職を促す有形無形の働きかけや圧力があるといいます。「追い出し部屋」や「転勤強要」の話も、ほとんどが大手企業でおこなわれたことです。
さらに、社員の立場からは、会社からの異動命令に従い続けた結果、社内ゼネラリストとして他社には活かしづらいキャリアが出来上がってしまっていたり、逆に細かく分業化、機能化された大手企業の組織の中で、狭い専門性だけに閉じこもる結果になっていたり、要は転職しようにもそれが難しいキャリアとなっていることがあります。
大手企業は、確かによほどのことがなければ倒産する心配はなく、会社は存続していきますが、そこで働く人の雇用や生活の安定とは、このように必ずしも一致していません。
大手企業と中小企業では、当然ですが働くうえでのメリットとデメリットがあります。
「知名度による信用」「ビジネス規模の大きさ」「相対的な給料の高さ」「福利厚生の充実」などは大手企業で働くメリットと言えますが、一方「出世の速さ」「社内調整の手間」「業務スピードの遅さ」「縦割りの非効率」「潰しが利かないキャリア」などは大手企業に必ずあるデメリットです。
ここ最近、20~30代の若手にもかかわらず、経験豊富で優秀なビジネスパーソンに何人もお会いする機会がありました。共通しているのは、皆さんそれなりの転職歴があり、それが個人の中で大手から中小、ベンチャーまでのバリエーションに富んでいることでした。たぶん自分自身のキャリアを考え、ビジネス経験を積むことを重視した結果なのだと思います。優秀な人たちは、そうやって自分の経験値と市場価値を高める努力をしています。
今は「会社の安定」と「個人生活の安定」は一致しなくなっています。「安定している」という理由だけで大手企業を志向するのは、もう時代遅れだと知るべきです。
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