2020年5月4日月曜日

危機のときのリーダーシップ


ある女子中学生の新聞投書が目に留まりました。
今までよく交わしていた挨拶が「また明日ね」という言葉で、今はこれを約束の言葉だと考えるようになったといいます。
新型コロナの影響で3月以降はこの言葉を口にすることがなくなり、そこからあらためて、毎日学校に通えること、自由に外出できること、何気なく話したり笑ったりできること、そして未来に対して約束ができることの有難さを感じているそうです。
「また明日ね」と約束を交わせる日常が早く戻ってほしいと締めくくられていました。

読みながらちょっと切ない気持ちになりましたが、人と会えないこと、約束ができないこと、さらに感染した人が急変して亡くなってしまう話などを聞いていると、「先が見えないこと」の不安というものが、これほど大きいことだったのかと感じます。

少し次元が違う話になりますが、リーダーシップの3つの基本機能と言われるものがあります。
・向かうべき方向と目標を提示する「旗を立てる(指示)機能」、

・目標に向けてチームを奮い立たせる「巻き込む(盛り上げ)機能」、

・達成するために様々な仕掛けを工夫する「やりきる仕組み(仕掛け)作り機能」
の三つです。

この中の「旗を立てる(指示)機能」は、自分たちの目的や目標、方針、計画といったものを掲げて明示することですが、これはまさに「先が見えるようにすること」です。
私は今までこれを「チーム一丸となる」とか、「推進力を上げる」とか、「方向性を定める」とか、そんなことを中心に考えていました。チーム全体が同じ方向を向けば、力が増して目標に早く到達できるということです。

ただ、ここ最近の新型コロナ自粛の中で、あらためて強く思ったのは、「旗を立てること」の大きな意味として、「不安を消す」があるということです。危機の中でのリーダーシップでは、「不安を消すこと」はとても重要です。

そもそも「不安」というのは、どうなるかわからないからそういう気持ちを持つ訳ですが、これから先に起こることが見えない、わからないというのは、ある意味当たり前のことです。ですから、人の心から「不安」が消えることはありません。
そうは言っても、ある程度見通せることはあります。だいたいの場合、「最悪の失敗でも被害はこのくらい」などの想定はできるでしょう。これまでの経験や周囲の様子などから、先のことを想定して「不安」を軽減することはできます。

しかし、今は先の見通しをすることが極端に難しくなっています。未知のことが多すぎるからです。
通常なら「今の健康状態であればすぐ死ぬことはない」と思いますが、新型コロナでは確実な治療法がなく、今は適切な医療が受けられる保証もなく、急に命を失うことがあり得ます。「失敗しても命までは取られない」とは言えません。

危機の際に「不安を消すこと」を考えるとき、必要なのは「情報開示と共有」です。向かう方向への旗を立てるとともに、旗を立てた理由に対する納得感が重要だからです。
私も周りの経営者や管理者たちは、リーダーとして本当に苦労していますが、いま不安が軽減できている組織は、影響が少ない見通しのところか、情報共有が適切におこなわれているところです。不安が大きいところほど、情報が少なくすぐ目の前のことまで見えなくなっています。

見通しがつかないこんな時だからこそ、不安を消すためには今まで以上に「旗を立てること」が大事であり、「情報共有」を意識しなければならないのだと思います。



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