ある会社で「人事考課の自己評価には意味があるのか?」と聞かれました。
その人の会社では、一般社員は自己評価せずに上司だけで評価を行い、最終結果のみをフィードバックしているそうです。フィードバックの目的は指導、育成が建前ですが、実際にはただの点数伝達になっていることもあるようです。
別の人からは「評価面談は必要か?」と聞かれました。
部下の人数が多く、かなり多くの時間と労力を評価のために使っているようで、部下の平均年齢も高いことから、面談での指導といっても、あまり手応えがないようです。
自己評価や面談の仕組みが「絶対に必要か?」と聞かれれば、私は何とも言えません。会社ごとの事情がありますし、やらなくてもそれなりの業績を上げている会社はたくさんあるからです。
ただし、「実施した方が良いのか?」と聞かれれば、よほどのことがない限り、私はイエスと答えます。あくまで私が見てきた中ですが、やらないことのメリットは管理職が楽になるくらいで、それぞれの会社を時系列で見続けていると、面倒でも手間をかけてコミュニケーションを重ねている会社は、従業員満足、社員定着、組織活性化、能力向上、そして業績と、様々な面で向上しています。
しかし、こういうことは他社との比較ではなかなかわかりづらいところがあります。転職者が「前の会社はやっていなかったが、今やっている状況と大差がない」とか、「前の会社ではやっていたのに、この会社はやっていないからダメだ」などと言いますが、企業風土、職場環境、過去からの経緯など、すべての状況が違いますし、これは2、3社での経験をもとにした主観的な感じ方に過ぎません。
「働きやすい会社ランキング」という調査が行われていて、毎年その結果が発表されています。
その評価項目の中に「評価オープン度」というものがあり、内容は以下のようなものです。
・人事考課の評価基準の公開、対象者の範囲
・360度評価の仕組み、対象者の範囲
・考課者以外の第三者が検証する仕組み、導入状況や対象者の範囲
・人事考課の結果を本人に伝える制度の有無
・人事考課の結果について異議申し立てをする制度の有無
・評価結果や目標達成度のフィードバックに際して上司と部下の面談の義務付け
・目標に対する貢献度などを評価する仕組みの導入
・目標に対する貢献度の個人の給与(基本給)への反映
つまり、こういう内容を重視して取り組んでいる会社が、社会一般から好感度が高い会社として認知されているのです。
この内容に対して、現状でどんなレベルにあるかは、それぞれの会社によって違います。まったく取り組んでいない会社も、すでに長期間に渡って取り組んでいる会社もあるでしょうが、その両社を比較することにはそれほど意味がありません。今回は評価制度の話ですが、その他も含めた人事施策に関する効果というのは、他社との比較ではわかりづらいからです。どんな方法でもよいですが、自社で「定点観測」をし続けることが必要です。
ですから問題は、その会社が何も取り組みをせずにいる場合か、取り組んでいても「効果が見えない」などと代替策もないままでやめてしまうような場合です。同じことをやり続けていても形骸化で効果は薄まり、やっていたことを単純にやめてしまうのは、よほどマイナスの施策でもやっていない限り、状況が好転することはありません。
そして、会社の人事施策が「変わらない」「後退する」では、その施策効果は測れません。「変えた」結果を、自社に閉じて時系列で見ていかなければ、効果の有無はわかりません。
ただし、取り組み課題を見つける上では、外部情報や他社情報は参考になります。
「評価オープン度」のような内容は、世間で何が重視されているかがわかりますし、他社の取り組み事例なども同じです。
あとは「やって意味があるのか」ではなく、「意味があるようにするにはどうするか」を考えなければなりません。行動して初めてやるべきことが見えてきます。
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