「脱ハンコ」の話が取り上げられるようになって、特に官公庁で見直しが進むとなれば、かなり多くのことが変わってくるでしょう。
捺印することが他の方法でも代用できたり、そのこと自体が意味をなさずに不要であったりする場合が該当するのでしょうが、考えてみると金融機関や保険の手続きでは、ずいぶん前から署名だけで済むようになっていますし、今でもハンコが必要といわれるのは、様々な行政手続きと企業内での事務手続きが多いようです。
最近では、婚姻届と離婚届の捺印を廃止する方向という話を聞きました。これらのハンコには儀礼的な要素や気持ちのけじめといったものも含んでいるので、私は必ずしも廃止でなくても良いと思っていますが、それ以外にたくさんの無用な捺印行為があるのは確かなので、できるだけ無くす方向というのは当然の流れだと思います。
今は行政機関の外部と内部の書類手続きが数多くやり玉に挙がっていますが、実は民間企業の内部手続きでも、相変わらずハンコがやめられないところはまだまだ多いです。
「無駄なハンコ」の話は、それが本人の意思表示として必要なものだとされてきたのが、実はいらないのではないかということから出てきたわけですが、「事務手続きの簡素化」という中でのそういった無駄というのは、大小さまざまなことを多くの場所で見かけます。これは普通の会社で私が見かけた範囲だけでも、かなり多くのものがあります。
同じような提出書類の重複や、必要と思えない記載事項があり、それぞれの担当者に理由を尋ねると、「今までそうしてきたから」という答えをもらうことがたくさんあります。
そうなった理由を追いかけていくと、ある時期の担当者が自分たちの都合だけで手続きを決めた結果だったり、みんな無くても問題ないと思っていたものの、やめて問題が起こると嫌だから続けているだけだったり、ただ今までのしきたりというだけだったり、そんな無駄なことにたくさん出会います。
こういうことが起こっている組織では、大きく3つの問題を見かけます。
・変えることで損失を起こしたくないという「現状維持バイアス」
・自分が変えたという責任を負いたくない「責任回避」
・今おこなわれていることに疑問を持たない「思考停止」
の3つです。
これは、人間の本能的な心理という部分もありますが、そういった本人たちの意識の問題だけでなく、組織風土をはじめとした環境が影響していることが多々あり、それらにも大きく3つの要素が見られます。
・提案ができない、承認までの手続きが複雑など、「変えることへのハードルが高い風土」
・加点よりも減点が多い「失敗を責める風土」
・上司に力が強い「上意下達の風土」
で、この中では、誰か力がある人のリーダーシップがない限り、見直しや改革は難しいものとなります。
この「3つの問題」と「3つの風土」を持つ会社は、変革、改革、見直しができない点で共通しています。典型的な官僚組織は、まさにこの状況に合致しているのではないでしょうか。
改革、改善が進まないのは、それができづらい理由と環境があります。そういう悩みがある会社は、この「3つの問題」と、その原因につながる「3つの風土」にあたる状況がないかどうかを、今一度見直してみてください。
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