コロナのせいで、人と会うことが難しくなっています。アフターコロナの働き方は、「会わずに済ませる」「移動しない」ということが、ごく普通になっていくだろうと言われています。コロナが収束したとしても、もう以前のようには戻らずに、出かけない、会わないが当たり前で、リモートの方が主流になっていくという話です。人が集まることや出会うこと、場を提供することをビジネスにしていた人たちは、これからの先行きに大きな不安を抱えています。
実際に様々なリモートツールを使って仕事をしてみると、結構不自由はなく、かえって生産性が上がるように感じるときもあり、意外にどうにかなるものだと思う反面、実際に人と会う機会があると、「やっぱり直接会って話せるほうが良いなぁ」と思います。会う機会が少なくなったせいもあって、そう思うことがよけいに多くなりました。でもこれからは、「いちいち人と会う手間は省こう」と考える人は、きっと増えていくのでしょう。
そんなことを考えていた中で、ある知人のコンサルタントに言われたのが「これからは“対面すること”の価値が上がっていく」という話でした。「対面のプレミア化」ということです。価値が上がるということは、それに関するビジネスの可能性もあるということです。
例えば、いまは経営が厳しくなっている飲食店が多く、みんなテイクアウトなどの工夫で頑張っていますが、料理というのは基本的に出来立てを食べた方がおいしいに決まっています。ここで、テイクアウトで構わない人とお店で食べたい人に分かれていくでしょうが、これはその場に行くことの方が、提供される価値は高まることになります。どこかの港に行かないと食べられない魚があるのと同じような話ですが、お店に行くことの価値が高ければ、対価もそれに見合ったものにしてよいはずです。
また、これからの営業活動は、直接「対面する」ということがたぶん段階を踏まないと難しくなります。アポしてとりあえずリモートならコンタクトできて、それを突破してようやく対面できるかどうかです。リモートだけで売れるものもあるでしょうが、高額なものほど直接対面して話した上で契約するという形は続くのではないでしょうか。これも「対面すること」の価値が上がっている一例でしょう。
ライブや音楽イベントで、これを機に「もうリモートでいい」と言っているファンには出会ったことがありません。その場で体感することの素晴らしさを知ってしまった人たちならば当然ですが、イベントが途絶えてしまったことで、逆にイベントの価値は上がっていると思います。もし再開されたら、どんなに高額なチケットでも、待ちわびた人たちが殺到するのではないでしょうか。
コロナが過ぎても「対面する機会は減ってしまうだろう」「だから自分たちのビジネスは難しくなるだろう」と、憂鬱な気持ちでいる人は多いかもしれませんが、対面することの良さや楽しさを知っている人たちは、そんな簡単に人と会ったり集まったりすることを切り捨てはしません。ただし、「対面で会うことに価値はあるのか」「その場に行くことに価値はあるのか」という判断は確実にするようになります。これも対面することがプレミア化しているからだと言えるでしょう。
そうなると、「あの人に会いたい」と思われる魅力や信頼関係、「あそこに行きたい」と思わせる楽しさや付加価値が大事になります。
私は、これからもずっと人と会う機会が少ないままで、人間関係が希薄になるようなことはないと思っています。逆に「対面」の大事さをあらためて感じて、その価値が上がっています。ただしそこでは、「大事な時間を使って対面する相手は誰か」という選別がされるようになります。
対面の価値が高まることで、これからは意義がある楽しい時間が増えていくのではないかと、今はちょっと前向きに考え始めています。
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