2020年10月29日木曜日

「一人だけ」からの影響

ある会社のマネージャーが、最近入社したばかりの若手社員と面談をしたとき、「雰囲気がギスギスしている」と言われたそうです。

理由をよく聞いていくと思い当たることがありました。ある一人の男性社員が周りの人とのコミュニケーションを避けるような態度を、あからさまに取っていたからです。仕事上での雑な対応からミスをして、それを批判した同僚数人に逆ギレして、それから周囲との関係が悪くなっていました。


周りからの接し方は特に以前と変わりなく普通にしていますが、本人の態度だけが良くないせいで、事情をよく知らない新入社員は、職場全体の雰囲気が悪いと感じていました。

マネージャーとして、その社員一人を除いて他のメンバーは全くそんなことはないと思っているのですが、「一人だけ」の影響で職場全体が良くない評価をされてしまっていたのです。

 

別のある会社では、特に女性社員同士の派閥意識が強く、それを嫌った退職者の多いことが問題になっていました。

しかし、ある時を境に状況が急激に改善していきました。派閥の中心人物だった女性一人が退職したことがきっかけでした。

実はほとんどのメンバーは、敵と味方を区別するようなそれまでの状況を好ましく思っていませんでしたが、中心的な女性社員との個人的な対立を避けたい気持ちで、やむなく現状に合わせていました。その人から距離を取りたい人が何となく別のグループになり、それも周囲から見ると派閥に見えていましたが、実際はそうではありませんでした。

これも、たった「一人だけ」の影響が、職場全体に波及してしまっていた結果でした。

 

「組織で起こったことにはみんなに何らかの責任がある」というのは、確かにそういう面もありますが、実はある一人だけ、もしくはある一つだけのことが、全体に波及して問題を生み出していることはたくさんあります。

新入社員につらくあたる「一人だけ」が、社員定着を妨げていたり、「一人だけ」の頻繁なミスが全体の品質を下げていたり、「一人だけ」の作業の遅さが全体の残業時間を増やしていたり、似たような状況はいろいろです。

 

そういう問題を組織全体の問題として対応するのは、「一人に責任を押し付けない」「個人攻撃をしない」といった精神論であれば悪くはありませんが、問題の本質は見誤っています。これは悪い意味での連帯責任となってしまっています。

 

本当は全体に責任があるのにそれを一人に押しつけることは、問題の本質から逃げていますが、同じように「一人だけ」の影響による問題を全体責任のように扱うのは、これも同じように問題の本質から逃げていることになります。

 

問題が「一人だけ」の影響だと指摘するのは、心情的にはしづらいことですが、実際にそういう場面は起こり得ます。「個人責任への押しつけ」は避けなければなりませんし、同じく「本質を間違った連帯責任」も避けるように意識しなければなりません。

「一人だけ」の影響は間違いなく存在します。 

 

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