日本企業の競争力の低下が言われるようになってから、ずいぶん時間が経ちました。
かつては時価総額ランキングの上位を日本企業が占める時代がありましたが、GAFAなどをはじめとした海外のIT企業が台頭して、今はトップ50にトヨタ自動車が唯一ランクインするだけという状況です。
日本企業の競争力が落ちてしまったのは、デフレなどの要因が言われますが、それよりも新しい産業やイノベーションを起こせなかったことが大きいという話があります。
確かに企業の現場の様子を見ていると、新しいことに取り組もうという雰囲気は少なく、せっかく新しい取り組みをしていても、企業内の承認のエスカレーション・プロセスの中でつぶされたり、特徴をそぎ落とされて普通になってしまったりして、イノベーションといわれるものは起こっていません。
そういうことへの危機感も薄い感じで、このまま日本がどんどん貧しくなっていってしまうのではないかという怖さを感じます。
多くのイノベーションは、既知のことの組み合わせから起こりますが、近しいものや似たもの同士の組み合わせではあまり画期的にものは生まれず、相互の関係が遠いほど、革新的な技術やビジネスにつながるとのことです。
例えばラーメン店同士、もう少し広げて飲食店同士の組み合わせよりは、まったく異業種相手の方が、イノベーションの可能性があるということです。
このイノベーションのために重要なのが、「多様性」だと言われます。専門性、価値観、その他属性の違う者同士が組んだ方が、革新的なものにつながります。
しかし最近は、どちらかというと自分と異質なものを遠ざけたり批判したりして、似た者同士や気が合う者同士で物事を進めようとすることが多いように感じます。企業の中でも、気心が知れた者同士のあうんの呼吸だけで仕事をし続ければ、新しいものなど産まれようがありません。
社員に企業理念への共感を求めるのはある程度必要なことですが、これも一種の同質性を求めていることになるので、行き過ぎには注意しなければなりません。「多様性」と「理念への共感」を両立させるには、いろんな人の価値観に刺さる多彩な共感ポイントを作ることが必要です。
企業としての基本的な価値観やバリューは共有しつつ、それぞれの社員の多様性を認め、その状況を保ち続けることが重要になってきます。「多様性」が企業の成長には不可欠な時代になっています。
もう一つ、この「多様性」は、社員の働きがいにとっても重要だという話があります。社員の定着や生産性を高めるために、働きがいを重視した取り組みを展開する企業が増えていますが、働きがいという個人の主観に対応するには、「多様性」に応えることが必須になります。
「多様性」が認められる環境では、お互いの価値観が尊重され、一方的な強制がなくなり、自律的な行動が可能になります。そこから自己肯定感や納得感が高まり、最終的には生産性や業績の向上にもつながるのです。
一見すると関係が無さそうな、「イノベーション」と「働きがい」ですが、このように「多様性」を橋渡しにして相互でつながっています。どうも日本の企業は「多様性」を認めるのが苦手なところがありますが、これからはそうはいきません。
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