2016年10月14日金曜日

人事制度改革なのに「あまり変えないでほしい」と言った会社の話



もう数年前の話になりますが、人事制度改革を検討しているというある企業にお話を聞きに行った時のことです。

社長から直々に、今の人事制度の課題、基本的な考え方、持っていきたい方向性などのお話をしていただき、そこから感じたのは、課題としてはいろいろな企業で起こっているものであること、他社の状況から考えると、制度と運用の両面で、それなりに手をかけていく必要があるということでした。

ただ、最後に社長が一言、「できればあまり大きな制度変更はして欲しくない」とおっしゃいます。人事制度“改革”なのに、あまり“改革”して欲しくないとは、かなりの矛盾です。

そこからいろいろお話をしてわかったのは、この社長は人事をはじめとした社内の仕組み作りにとても熱心な方で、話しぶりから見てもかなり勉強もされているようです。ただ、社長のその熱心さに社員たちがついて来られない状況があり、それが「できればあまり変えないでほしい」という話につながっているようでした。

実際、現状で運用されている制度も、それなりに作り込まれたもので、ただ型通りのものを持ち込んだ訳ではなく、自社なりに工夫がされた様子もありますし、課題があるとは言っても、それなりに運用されて一定の効果も生んでいると思います。

ただ、これが社員の立場からすると、「手間ばかり増えて、その割に効果が見えない」と思っているようなところがあります。これまでもわりと頻繁に制度や運用の見直しは行っていたようで、その意識によけいに拍車がかかっています。
要は、制度改革や見直しというと、「面倒なこと」「手間が増える」「直接のメリットはない」など、ネガティブな印象でトラウマになっているということです。実際に、まったくメリットがないということはありませんから、ムードやイメージでそうなってしまっているという部分が強いようです。

ですから、社内でやろうとすればできるのに、あえて社外に依頼しようと考えたことも、「できるだけ変えないで欲しい」と言ったことも、十分に理解ができることです。
ここでまずやるべきことは、社員のネガティブムードを変えることなので、社員からの意見を聞き、今の制度の理解と納得を得られるように説明し、場合によっては後退となるような制度変更も考えていくということになります。ただ、大きなジャンプのために一度しゃがみ込むと考えれば、これも必要なことです。

「人事制度改革」といっても、本当にいろいろなパターンがあります。

0 件のコメント:

コメントを投稿