2016年10月7日金曜日

「日本の労働生産性が低い」は、本当に実態を表しているのか?



あるウェブ記事を読んでいて、「労働生産性」に関する話が出ていました。
よく、「日本の労働生産性は諸外国と比べて低い」などと言われ、これが昨今の“働き方改革”の必要性の根拠の一つとして挙げられています。

2014年のデータを調べてみると、OECD加盟国では1位ルクセンブルク、2位ノルウェーで、3位スイス、4位アメリカと続き、日本は18位、2013年のデータでは日本は22位と、確かに高い順位とは言えません。先進7か国の中では最下位争いをしている状況のようです。

ただ、この記事では、労働生産性の数字の見方も説明していました。
労働生産性の算式は、「付加価値額÷労働投入量」ですが、これは労働投入量が少なくても、付加価値額が高ければ生産性は高いということになります。

例えば1位のルクセンブルクは、鉄鉱石の産出国でヨーロッパの金融センターであること、2位のノルウェーも北海油田のおかげで、それぞれ付加価値額が高いのだそうです。資源国では労働生産性も高く位置づけられてしまう状況があるのだそうです。

他にも、例えば労働投入量に対する賃金を徹底的に安くすれば、付加価値額が上がるので労働生産性は高くなるとか、このデータには国外からの流入者はカウントされていないために、国外からの就労者の多い国の指標が高くなる傾向があるとか、いろいろ読み解く必要があるようです。
資源もなく、移民など国外からの労働者の少ない日本では、低い結果になるのは当然ということです。
「労働生産性」は、国際比較に頻繁に使われる指標ではありますが、こうやって見ると、どうも日本の実態はあまり反映できていないのではないかと感じてしまいます。

このような一般的に使われている指標について、最近それが本当に実態を表しているのだろうかという疑問を持つことが何度かありました。
「平均株価」が本当に景気の実態を示しているのだろうかとか、「失業率」が改善したといっても、実は不本意な就業が増えているのではないだろうかとか、そんな感じのことです。

これは企業経営や人事といった、私の仕事に関わることでもそうですが、定量化、数値化した成果の状況、統計数字などによる状況判断は大事なことではあるものの、その見方や使い方を誤ると、大きな状況判断ミスにつながってしまうのではないかということです。
また、それは数値という形ではっきり示されるものであるがゆえに、そこから実態を確認しようとする意識や、疑ってみようとする目は薄れていってしまいがちではないかと思います。

数値化された具体的な指標で物事を判断するのは、大事なことですが、実態が表現されない指標を使ってしまうことの危険性を感じます。
「労働生産性」に関する議論にも、少しそんなことを感じ始めています。


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