2017年12月18日月曜日

副業推進のモデル就業規則で見えた、まだ後ろ向きな企業の姿勢



厚生労働省で進められている副業・兼業に関する議論で、それを推進するためのモデル就業規則案が提示されています。
この中の“副業・兼業を禁止する条件”も何度か見直され、最新の案では以下の規定が示されています。
(1)労務提供上の支障がある場合
(2)企業秘密が漏洩する場合
(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
(4)競業に当たる場合

このうち(4)は新たに盛り込まれたものとのことで、さらに多くの企業が懸念する長時間労働については、(1)に含まれるとの解説が記載されています。
これらの規定について、人は性善説ばかりで動きませんから、何か問題が起こった際や事前にクギを刺すという歯止めの意味からしても、事前にきちんと決まりを作っておくことは必要です。

それはそうとして、この一連の議論は「柔軟な働き方に関する検討会」という中でされており、そういう意味ではこの副業・兼業も、これらを推進する立場でおこなわれているはずですが、特に経営者団体から出ている資料を見ていると、副業・兼業に関してははっきりと「やや抵抗があり、今のところは旗を振って推進する立場にない」と書かれていて、以降に問題点だけが列挙されています。

私がこの「モデル就業規則案」を見て初めに思ったのは、「本音では副業・兼業を認めたくないというニュアンスが出ている」との印象でしたが、資料を見ていくと実際そういうことのようです。

経営者団体の資料で問題点に挙げられているのは、「秘密保持」「労働時間管理」「休日休暇、残業などの扱い」「雇用契約の有無による違い」などで、問題があるのは確かにその通りです。
ただ、その対策には言及されておらず、「慎重な検討を要する」「懸念が多い」「混乱を生じさせる」などと書かれているだけで、明らかに「やりたくない」という姿勢しか見えませんでした。
これが本当に企業側の総意なのかはわかりませんが、代表している経営者団体がそう言っているので、たぶんこれからもそういう方向で議論が進むのでしょう。

この副業・兼業に関する私の意見は、以前にもどこかで述べたことがありますが、「今の不確実な時代に、会社が“副業禁止”を言うのであれば、“社員の面倒は自社だけで最後まですべて見る”という覚悟が必要だ」ということです。それができないのに「副業禁止」をいうのは、社員が自分の生活を守る選択肢を奪っているだけです。

私のようなコンサルタントは、企業との雇用関係はありませんが、複数の会社と契約を結んで仕事をします。どの仕事が副業ということはなくすべてが本業ですが、人事という分野の仕事なので、かなり内部的な機密事項にも触れます。当然機密保持には相当に気を使いますが、もしもそこで「機密保持のために他社との仕事をやめなければ契約できない」などと言われたら、それは無理な相談です。

また、今のように転職が一般的な中で、いくら機密保持や競業防止でいろいろな手立てをしても、本当に100%抑えきるのは難しいです。また、どんな会社でも中途採用者と退職者は両方いますから、必ず何らかの情報流通が起こります。それは自社にとってのメリットとデメリットの両面があるでしょう。にもかかわらず、「転職」は良いが「副業」はだめというのもおかしな話です。

副業・兼業に関する問題は、すべて解決しようとすればできることばかりです。それに後ろ向きなのはいろいろ理屈がついていますが、結局どこかに「社員が自社以外の仕事をすること」への嫉妬のような感情があるように思います。「浮気をするな」に似ています。
社員の生活を将来に渡って保障するならそれでも良いですが、果たしてそれができるのでしょうか。もうとっくに時代は変わっていると思います。

【追伸】
その後の最新報道によれば「容認」に転換したとのことなので、状況を見守りたいと思います。



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