2017年12月8日金曜日

「働き方改革」は“背反”することの“両立”だから難しい



「働き方改革」に伴う企業の動きが活発になっています。
ただし、その中身としては、残業削減や時間短縮をひたすら追いかけていたり、とにかく在宅勤務を始めることであったり、とりあえず副業を認めることであったり、どうも局所的のことだけに矮小化された動きがまだまだ多いように感じます。
しかし、企業の経営者、担当者たちの中には、それではダメだと気づき始めている人はたくさんいて、もっと総合的な取り組みを模索し始めています。実際にやってみて、そこから深く考えれば考えるほど、その難しさに直面していろいろ悩んでいるのではないでしょうか。

この「働き方改革」には、それぞれ置かれた立場によって、大きく二つの側面があります。
まず会社側から見れば、「働き方改革」で目指すものの主題は「高付加価値」「高生産性」ということです。社員の働き方が今までと同じままでは企業の競争力は高められないので、それを変えていかなければならないということです。

一方、働く人の側から見れば、「働き方改革」というのは、それによって自分たちが働く上での制約条件を回避して、より働きやすい環境を作ろうということです。ここで制約条件といっているのは、一般的なものでは育児、介護、持病などといったもので、働く時間や働く場所、仕事内容に関する制約です。
例えば、決められた就業時間帯に合わせることが難しいであったり、何かあったときに自宅にすぐ戻れる場所でなければ働けないであったり、他にも大学などでの学び直し、地域での活動などが理由になることもあります。

こうやって見ていくと、なぜ「働き方改革」が難しいかといえば、この二つの側面がそれぞれ背反するトレードオフの関係になりがちだということにあります。「あちらを立てればこちらが立たず」ということになりやすく、両すくみになって物事が進まなくなってしまうのです。

例えば残業削減であれば、会社は生産性を重視しているので、要求する仕事量は減らしません。結果として働く人の側が多くの負担を背負うこととなり、隠れて仕事をするサービス残業が増えたとか、残業対象でない管理職に仕事が集中するといったことがおこります。このような偏った負担は長続きせず、本質的な問題解決にはなりません。

また、在宅勤務や副業解禁は、確かに働く側にとってのメリットですが、では会社側が一方的に折れたのかといえば、そうとは言えないところがあります。在宅勤務では通勤費削減のような会社側のメリットがありますし、副業にはより優秀な人材を求めるために、こういう制度を入れて企業イメージを向上させたいといった意図もあります。両者ともにメリットが見出せるからこそ、物事が進むのです。

このように、「働き方改革」の難しさは“背反”してしまいがちなことを“両立”しなければならないというところにあります。そもそも「生産性」があがって「付加価値」が高まれば、会社の業績は上がり、仕事はやりやすく楽になり、それは会社にとっても社員にとってもメリットしかありませんが、もしもそれがどちらかの負担に偏ると、結局は長続きせずに元に戻ってしまいます。

「働き方改革」の成否は、いかにして“背反”ではなく“両立”させるかという意識にかかっています。そして、これらの動きは会社が主導しておこなうことが大半なので、ともすればそちらの都合が優先されがちになります。
会社側の方がより強く意識して、“背反”ではなく“両立”を目指すことが重要です。

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