2018年4月2日月曜日

「組織の論理」に立ち向かう人と合わせる人の良し悪し


大相撲の貴乃花親方が、弟子の暴力事件の責任を問われ、親方としては一番下の階級に降格処分になったという話題がありました。その前に元横綱による傷害事件での対応を巡って協会の理事を解任されており、そこからさらに処分をされた形となっています。

この一連の話に関しては、いろいろな意見を耳にします。
「組織に敵対的な態度をしていたにもかかわらず、自分の側に不始末があったのでは仕方がないこと」

「そもそも協会の対応のまずさから始まっているのに、責任を問われるのは理不尽」
その他賛否両論の意見があります。

そんな中で、私が気になったのは、あるところで見かけた「貴乃花親方は、ある意味理想の上司だったのではないか」との話です。
「傷つけられた弟子のためには全力で怒り、弟子の不始末には自分の立場が悪くなってでも全力で頭下げ、自分の弟子の側に全力で寄り添う貴乃花親方は、上司としては最高ではないか」
「会社を敵に回してまでかばってくれる上司などは今どきいない」
というものでした。
組織の立場を重視する人にとっては受け入れられない話でしょうし、部下の立場で考えれば賛同する人も多いのではないでしょうか。

私が自分だったらどうしただろうかと考えるのですが、ただ「長い物には巻かれろ」ということは嫌いなので、原則としては自分が思う正義や正論を通そうとすると思います。ただし、それを通すには組織との関係が壊れてしまっては元も子もないので、それなりの関係は維持しようとするだろうと思います。
ですから、正義、正論を通すという部分では親方に共感します。自分だったらそこまで徹底して部下を守れるかどうかは自信がありませんが、そうやって思いを貫こうとする姿勢は素晴らしいと思います。
その一方、組織との関係という点では、そこまでかたくなな態度をとる必要があったのだろうかと思います。報道その他の情報からの話なので、実態がどうだったのかはわかりませんし、仮にそうだったとしても、過去からの経緯など何かの理由があってのことかもしれません。それでもやはりもう少し違うやり方があったはずです。

これは私が企業と向き合うコンサルティングの現場での話ですが、ただ正論をぶつけるだけで状況が良くなることはありません。非常識、非合法というようなことはともかくとして、不備、隠蔽、甘え、不誠実、その他現状のまずさは一度受け入れた上で、そこからどう進めることが改善の近道になるのかを考えます。そうでなければ社長、管理者、社員などの当事者たちが反感を持つだけで、改革改善にはつながらなくなるからです。その結果として時間がかかることもありますが、それは急いで進めても結局定着せずにリバウンド現象が起こると考えるからで、結果として最速でもそれくらいの時間は必要だという判断があるからです。
「変えようとしないと変わらない」ですが、「変えようとすると変わらない」というのもまた事実です。

私が今まで見てきた中では、組織に立ち向かおうとするタイプの人も、組織に合わせる、悪く言うと迎合しようというタイプの人も、両方がいました。どちらかと言えば、立ち向かうタイプの方が少なかった気がします。結果的にどちらが良かったかと言えば、極端に偏った人たちからは、どちらも良い結果は生まれませんでした。

何かを変えよう、動かそうとすれば、組織に立ち向かうことと合わせることの両方がなければうまくいきません。ただし、そのバランスは時と場合によっていろいろです。
現状の変革を志すならば、この両方の意識を準備しておかなければなりません。


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