心理学の話が紹介されている記事の中で、「アメとムチ」ではなく、「アメと無視」の方が効果的だという話がありました。
「アメとムチ」とは、心理学でいう外発的動機づけにあたり、「手伝いをしたら欲しいものを買ってあげる」「勉強しないとお小遣いを減らす」といったものですが、これらは効果が一時的で長続きしないことがわかっています。
ここで目にしたのが「アメと無視」という話で、著名な心理学者の植木理恵さんの著作ほか、いろいろなところで紹介されています。
相手が望むようなことをしてくれた時に、褒めるなどのアメを与えることは同じですが、もし望まないことの場合は、非難したり叱責したりするのではなく、単に無視してやり過ごすというものです。
ムチの場合は、その使い方を誤ると、それを恐れて行動すること自体を放棄してしまい、「意欲がない」「自分から行動しない」という人を作り出してしまうことにもなりかねないとのことです。相手の意欲を盛り上げようとしたとき、ムチは意外に役に立たないのだそうです。
ミスや不都合があったとき、ムチによって罰や叱責を与えるのではなく、あえて無視してしまうと、人はより良い行動のためにリスクをとることができるようになるので、行動することを促すことができます。
また、相手へのアメとなる好意的な表現をあえて減らしていくと、人はさらに上の努力をするようになり、好意的な反応があったときの喜びが増すとか、そんな効果があるそうです。同じアメではマンネリ化して効果が薄れていくことを避けられるようです。
このあたりの話を会社で当てはめてみるとどうでしょうか。
例えば「仕事で頑張るとボーナスが増える」「給料が上がる」などというのは外発的動機づけですが、そのことがすぐに当たり前になってしまい、効果が続かないばかりか、逆に不満を生んでしまうこともあるという経験をしている人は多いでしょう。
最近は、特に若手社員に対して「意欲がない」「自分から行動しない」という話を聞きますが、これは決して意欲がないわけではなく、他人からのダメ出しを恐れ、失敗しないように慎重になっているということがあります。そういう教育をされてきたという本人たちの責任とは言えない面もあるでしょう。
本人たちはやる気満々で仕事の指示を待っているのに、それを受け身と捉えられて「やる気がない」などといわれてしまい、どうしたらよいのかわからなくなってしまったという話を聞いたことがあります。
ここで「アメと無視」という方法であれば、行動すること自体への恐れを軽減して、良い行動に向けた試行錯誤を促すことができます。もちろんムチが必要な場面はあり、それは度を越えた大きなミスや不注意、不正行為に関することなど、その行動自体を止める必要があることに限られるでしょう。
人材育成の場面での「アメと無視」は、十分に試してみる価値がある方法だと思います。
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