2018年4月18日水曜日

「いかに採用するか」から「いない前提でどうするか」へ


最近の記事で「人手不足倒産が増えている」というものがありました。
帝国データバンクが、離職や採用難で人手を確保できずに収益悪化したことによる倒産を「人手不足倒産」と定義して、2013~2017年度までの5年間について集計したところによると、5年間の倒産件数の累計は371件で、うち2017年度は114件と急増しています。
2017年度の状況では、負債規模「1億円未満」が57件、「1~5億円未満」が50件と中小零細企業が圧倒的に多く、業種別では「建設業」が最多の31件、ほか「製造業」「小売業」「運輸・通信業」など、幅広い業種で倒産が増加傾向だったとのことです。
人が集まらないので賃上げに踏み切ったが、生産性が伴わずに収益を圧迫して倒産するような例もあるようです。

これと多少関連する話で、学校の定員割れの話があります。
大学の場合、18歳人口は1990年の200万人から2017年は120万人に減少したものの、大学進学率が30%程度から50%超へ増加したことで、大学の在学者数はそれほど変わっていないそうです。ただ、大学の数が激増したために、私立大学では定員割れのところが40%あり、大学の経営を圧迫しています。
また、都立高校では今年度は3次募集まで行いましたが、全日制では31校が定員割れになりました。都が昨春から拡充している私立高校授業料の「実質無償化」が影響しているとの見方もあるようですが、いずれにしても、これから少子化が進んでいく中で、学生数が増えないことは明らかです。

企業では、最近の採用難で「とにかく採用を何とかしなければ」という危機感を持っているところがたくさんあり、私も多くのご相談を頂きます。いろいろな工夫をして多少マシにはなりますが、それでも思ったような改善レベルまでにはなかなか達しません。

これは世の中の状況を見ていれば当然で、「そもそも人がいないのだからどうしようもない」というところがあります。「採用の工夫」というのは、他社との競争に勝つことが主眼になりますが、かつてはそれでどうにかできていたものが、今はマーケットが縮む中でのシェア争いに勝つということなので、特に競争力がない中小企業ではどんどん難易度が増しています。採用できない方が当たり前と言っても過言ではありません。
そうなると必要になるのは、「人がいない前提で仕事を進めるにはどうするか」という発想しかありません。一言で言えば生産性向上や効率化ということになります。

ここで、今までとは違う新しい取り組みは、実は大企業よりも中小企業の方が進んでいるという話があります。中小企業は大企業に比べて外からの競争圧力が強いので、常に変化対応しなければならないことや、オーナー経営者などが多いので、決断から実行までが早いということがあるからです。中小企業の方が変化対応力は高いという側面があります。

人材採用についても、基本的には大企業の方が競争力は高いですが、逆に言えば大企業は今までのやり方を最後まで続けられるので、「人がいない前提で仕事を進める」という人材不足への対応は一番遅れていくとも言えます。さらに変化のプロセスも大企業の方が時間はかかります。中小企業が変化対応力を活かして取り組めば、大企業に先んじて有利な状況を作り出せる可能性があります。

そのためには今までの仕事のやり方ありきではなく、新しい発想で効率化を考えなければなりません。これにはIT化やペーパーレス化、設備投資などはもちろんありますが、最も大きいのは「無駄な仕事をやめる」ということです。ここで無駄と言っているのは、過剰品質、過剰サービス、過剰スペックといったものや、過剰な社内コンセンサス、そのための社内プレゼンや会議、その他の社内制度や手続きといったものも含まれます。

例えば、全社員の給料が一律だったら、計算事務は非常に簡単になりますし、評価も不要になります。お店の営業時間を減らせば労働時間は確実に減ります。それらがすべてデメリットにつながるとは限りません。
これは極端な例ですが、今まで当たり前だったことも、これくらいゼロベースで考え直さなければ、仕事の効率化は進みません。また、そういうことは中小企業の方が絶対にやりやすいです。

採用手法をいろいろ考えることは必要ですが、特に中小企業では、「いかに採用するか」から「いない前提でどうするか」へ、視点を変えなければならないと思います。

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