程度には差があったとしても、誰でも「苦手な人」がいると思います。
先日あるテレビ番組で「苦手な人」への対処方法として紹介されていたのは、「距離を置くこと」でした。「苦手な人」と仲良くなろうとか関係を良くしようとか無理して付き合おうとせず、挨拶や最低限の礼儀、その他のコミュニケーションだけを保ちながら、あえて近づこうとしないのが対応としては良い方法だとされていました。
ただ、これがビジネスの場でのこととなると、一概に「距離を置くこと」は難しい場合が出てきます。特に上司と部下の関係でお互いもしくはどちらかが苦手と思っていたとして、ただ距離を置くという訳にはいきません。最低限のコミュニケーションも、仕事が関わるとなればそれなりの量が必要です。
先日もそんな質問を受け、それは能力は高いが態度に横柄なところがある部下に、上司が苦手意識を持っているものでしたが、私がその場で言ったのは「できるだけ一対一で向き合わないこと」でした。決められた個別面談などの特別な場面は除いても、他では自分の上司や他のリーダーなど、できるだけ第三者を交えてコミュニケーションをとることで、多少は改善できるのではないかと思ったのです。それでも難しければ、配置転換ということも選択肢ではないかと考えました。
ただ、後からいろいろ考えると、上司と部下で一対一にならないようにするのは結構難しいことですし、異動はもっと広い範囲に影響を及ぼすので、簡単にはできません。
状況に応じていろいろな手を考えなければなりませんが、特に中小企業の場合は仕事内容が特殊、代替要員がいないなどの事情で、人間関係を組み替えられないことが多々ありますし、部長はいつまでも部長で課長はいつまでも課長など、序列が固定していて下剋上はない環境であったり、営業も総務も経理も工場も、ずっと同じ顔触れであったりするので、「苦手な人」が身近に固定されやすい事情もあります。
そんな一種の閉塞感が生産性を下げたり、メンタルダウンを引き起こしたり、退職につながってしまったりします。
そう考えると、ビジネスの上での「苦手な人」への対応は、この「閉塞感を少しでも減らすこと」になります。相談先、代わりの人、逃げ場や逃げ道を作って、直接対峙し続けずに済むようにすることです。
その中には確かに「一対一にしない」「異動や配置転換」という方法はありますが、決してそれだけではありません。
ここで注意しなければならないのは、自分にとって「苦手な人」という気持ちを転換するのは相当に難しいということです。中には「付き合っていれば気にならなくなる」「そのうち慣れる」「見方を変えればいいところがある」など、苦手意識は変えられるという人がいますが、それはかなりのレアケースで多分に精神論が混じっています。
ビジネスの場での「苦手な人」への対応は難しく、状況に応じていろいろな方法を考えなければなりませんが、ここでやってはいけないことは一つだけ、それは「環境を変えずに人の気持ちを変えようとすること」です。
「苦手な人」は本人が努力しても簡単には変えられません。周りが意識して環境を変えなければ、複雑な人間関係で苦労する人が増えるだけではないかと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿