2016年9月2日金曜日

「就活が苦手な人」を頑張って採用する企業



最近の就活は売り手市場と言われますが、みんながみんな楽勝という訳ではありません。多くの会社に応募し、なかなか決まらずに苦労している人も多いと思います。

就活の中で、企業から良い評価をもらえる人というのは、その前段で書類選考やテストがあるかもしれませんが、やはり面接での対応が良い人はないかと思います。
面接が得意な人というのは弁舌が立つ、話がうまい、口頭でのコミュニケーションが得意というような人であり、逆から見れば、面接が苦手な人はそのあたりが不得手の人で、就職活動では苦労するのは、そういう人ということになるでしょう。

これはある中小規模の企業ですが、応募者自体の人数があまり多くないこともあり、社長は「必ず一つは応募者の良いところを見つけるように」と言明しています。選り好みをしていては、人数がそろわないというのが実際のところです。

「必ず良いところを見つけろ」と言われるのは、採用担当者としてはかなり難しいことで、この会社では様々な筆記テストや実技テストを行い、一人一人の選考には時間をかけています。

私も面接には立ち会うのですが、ある日会った候補者は、とにかく緊張しているのか、なかなか良いコミュニケーションが取れません。質問をしても「はい」や「いいえ」で終わってしまったり、何か聞いても型通りの答えしか返ってきません。ただ、それは適当にやっている訳ではなく、一生懸命なことだけはわかります。

普通の会社であれば、「これでは難しいね」と不採用となってしまうのでしょうが、この会社では何か良いところを見つけなければならないという社長命令があるので、他にいくつかのテストをすることになりました。

適性テストを見ると、基本的には地味でおとなしい人で、自分から前面に出ていく人ではありません。面接での過緊張の様子は、ここからも理解できます。
そんな中で、実技テストとしてパソコンのデータ入力操作をやってもらうと、これがピカイチでテキパキしています。本人に聞いてみると、もともと漢字の読みや文章を書くことは得意だったようで、そんな内容のアルバイトもしていたようです。

この会社では、実際の仕事でもこのような作業があり、この応募者を評価した社員によると、「自分たちの中の誰よりも早くて正確」ということでした。

その後、この人は最終面接に進み、そこでの応対も相変わらずうまくはありませんでしたが、実技テストの結果が評価されて無事入社することとなり、その後はデータ入力の担当責任者として活躍しています。
もともとの性格からか、自分から気づいて何かをやることが少ないとか、積極性が足りないとか、それなりの欠点はありますが、会社の戦力として十分な活躍をしています。

1人の人間にここまで手間をかけて選考する会社もめったにないですし、たぶん一般的な採用活動では見出せなかった人材だと思いますが、真剣に探すとこういう人材が隠れている場合があるということでしょう。

もう一つ、中小企業にとってはメリットだと思いますが、就職活動が苦手な人は、その後の会社への定着度合いがとても高いということがあります。「もうあんな苦手なことはしなくない」という思いがあるので、自分の良さを見出してくれた今の会社で、何とか精いっぱい頑張ろうという姿勢があります。
就活が苦手な人を採用するというのは、究極の退職者対策になるのかもしれません。

この会社の人材を採用する姿勢を、私はとても高く評価しています。


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