2016年9月26日月曜日

「積極採用」と「厳選採用」との間のバランス



成長基調で事業が拡大している企業の場合、特に最近は人手不足の傾向が顕著に表れています。
積極的な採用活動を展開していても、望ましい人材がなかなか確保できません。そうなると、どうしても採用人数を優先しがちになってきます。決して基準を下げているつもりがないにもかかわらず、無意識のうちの徐々にそうなっているケースもあります。

そんな「積極採用」の時によく見られるのは、応募者に対する「善意の解釈」です。
「ちょっと気になるところはあるが、たぶん何とかなるだろう」
「ちょっと能力は足りないかもしれないが、教えれば何とかなるだろう」
「直接の経験はないが、この経験が応用できそうだから大丈夫だろう」
というような感じです。

そして、こういう判断をした結果として、総じてよく見られるのは「やっぱり最初に心配した通りで、何とかならなかった」という状況です。これはあくまで私が経験してきた中での個人的な感覚ですが、初めに心配したことが結局当たっていたという確率は、7割8割という感じであるように思っています。

こうなると、本人も仕事がつらい、向いていないという状況を自覚するので、多くが辞めていってしまいます。会社としてはさらにまたその人員の補充もしなければならなくなり、俗に言われる「ザルで水をすくう」という悪循環に陥ります。採用活動の労力とお金ばかりがかかり、結果があまりついて来ないということです。

ただ、これも私が見てきた経験でのことですが、成長していく企業には必ずこういう時期があります。知名度は低く応募者を集められない、でも人は欲しいという環境の中で「積極採用」を行う会社では、一度は通らなければならない道なのかもしれません。

それでも、どうにかこうにか人を増やしながら、こういう活動を何年か続けていると、会社の中では徐々に疑問が湧いてきます。「こんなやり方はお金と労力の無駄ではないか」「やはり採用基準が甘いのではないか」ということです。
こうなってくると、今度は今までのやり方では効率的ではないということで、特に“量より質だ”という方向が強まっていきます。俗に言われる「厳選採用」へのシフトです。

採用スタッフの体制を強化し、今までよりは厳し目の採用基準で、「善意の解釈」はやめるという形になっていくことが多いです。
そうなれば当然、今までのような採用人数は維持しづらくなりますから、特に現場の人手不足感が強い場合は、「もっと人数確保を!」という圧力が強まってきます。

そして、ここから先は、企業によって「もっと数」なのか、「もっと質」なのかの判断は異なってきます。その時の会社状況によって、「積極採用」と「厳選採用」との間で、バランスを取り始めます。 

企業の採用活動で、数と質のバランスを取ることなど、当然のことだと思われるかもしれません。ただ、自社にとっての最高の「積極採用」と、最高の「厳選採用」の両極端を経験しなければ、その間にある、その時その時の適切なバランスを見つけ出すことは、なかなかできません。

人事の課題解決は、どんなものでもそうですが、会社としての経験の積み重ねが必要です。

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