2016年9月7日水曜日

「理想の仕事」という調査結果を見て思ったこと



NHKでは「日本人の意識」調査といって、同じ質問、同じ方法で5年ごとに実施して、日本人の生活や社会についての意見の動きをとらようという目的の世論調査があります。1973年の石油ショック直前が第1回で、最新は2013年に行われた9回目になるのだそうです。

この中に、「理想の仕事」という設問があります。12個の選択肢の中で1番目と2番目にそう思う項目を選ぶものですが、その1番目と2番目に選ばれた項目を足したトップ4は、「仲間と楽しく働ける仕事(仲間)」が42.7%、「健康をそこなう心配がない仕事(健康)」が32.7%、「失業の心配がない仕事(失業)」が31.1%、「専門知識や特技が生かせる仕事(専門)」が29.2%の順となっていました。ちなみに第1回の結果では、1位が「健康」で46.5%、2位が「仲間」で36.6%、3位が「専門」で26.0%、4位が「失業」で20.2%となっており、経年変化の中でもこのトップ4の構成は変わっていないようです。

次に続いているのは「世の中のためになる仕事(貢献)」の24.2%で、これは直近では徐々に増えていて、その次の「高い収入が得られる仕事(収入)」の17.8%は、直近での比率は徐々に減ってきています。

他の選択肢としては、「責任者として采配が振るえる仕事(責任)」「世間からもてはやされる仕事(名声)」「働く時間が短い仕事(時間)」などがありますが、これらは過去の調査から一貫して比率が低く、「独立して人に気がねなくやれる仕事(独立)」という項目は、初回調査で17.3%あったものが最新では5.4%と、その数は三分の一以下に減っています。

このあたりの調査結果は、私自身が現場で感じている肌感覚ともおおむね合致していて、その傾向として、「安定志向の高まり」「お金だけではないという感覚」「人間関係重視の姿勢」などがうかがえると思います。

こういう結果は、これからの人事施策を考える上で、大いに参考になると思っています。
例えば人事制度という観点でいえば、これまでの制度は「収入」「責任」「名声」といった部分を動機づけの材料としているようなところがありますが、この調査結果からすれば、それは「理想の仕事」からは離れた項目になっています。成果主義があまり成功せず、全体の生産性を上げることにつながらなかったという理由の一つではないかと思います。

このあたりに気づいた企業は、「専門」という部分で人材育成を重視し始めたり、「貢献」という部分で、事業そのものやその他の活動で、社会貢献につながる取り組みを意識し始めています。
「健康」ということでは、メンタルヘルスだけでなく、さらに健康経営といったキーワードでの取り組みが活発になり始めていますし、「仲間」という部分では、インフォーマルなイベントも含め、社員同士をつなごうという様々な取り組みが見直されてきています。「失業」という部分での雇用の安定も重要な要素でしょう。

「理想の仕事」が実現されていれば、辞める人は少なくなり、仕事が原因で体調を崩すこともなくなり、仕事の生産性は上がっていくはずです。
このような施策を「社員の甘やかしだ」という人がいますが、業績向上や生産性向上につながる取り組みは、決して甘やかしではありません。

社員にとっての「理想の仕事」を目指す取り組みは、会社にも求められていることだと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿