2016年9月9日金曜日

増えている感じがする「控え目すぎる人事部」



「人事部」がある会社やない会社、会社の事情でいろいろですが、社内の「人事」に関する権限を持った部署というのは、一般的には権威部門というような扱いをされます。

社員全員の個人情報や、プライベートの動向まで把握していて、評価結果や給与の金額、誰をどの職制にすえるか、人員の異動や配置をどうするかといった権限を最終的に握っているということでは、確かに大きな権限を持っているといえます。

ある大手企業出身の方から言われたことがあるのは、「できれば人事の者とは付き合いたくない」ということで、それは「自分たちの個人情報を、一方的に握っているような人間とは友達になりたくない」とのことでした。
その会社では、一度人事畑に行った人はその後もずっと人事であり、人事は人事同士の付き合いしかないし、他の現場の人間も、あえて人事とは深く付き合おうとしないのだそうです。
かなり極端な例で、大いに偏見も混じっているように思いますが、こういう見方をする人がいても仕方がない仕事だという面があるのは事実でしょう。

ただ、私が多くの企業の人事部とかかわる中で、このような権限を振りかざす人事部というのは、実際に出会ったことはまだありません。それどころか、どちらかといえば権威や権限については抑制的すぎる、現場とのかかわりが控え目すぎると感じることの方が多いと感じます。

これはその会社によりけりなので、一概には言えないところではありますが、例えば人事の仕事にあまり専門性を見出していない会社では、部門員の大半が何年か単位の定期異動の中で入れ替わっていきます。当然専門性は育ちませんし、人事でのキャリアは通過点だと思えば、その間に波風立てるような余計なことはしたくないと考えるでしょう。

ここまでではなくても、人事部門に属する人たちの多くは、できるだけ現場の意向に配慮し、余計な口出しを避け、現場主導でいろいろな取り組みを回そうとしているように感じます。現場のことは現場に任せた方がスムーズということがありますし、直接現場を見ていないのでわからないという遠慮もあるでしょう。

ただ、この姿勢を現場がどう見ているかといえば、人事部門に対して「現場を知らない」「見ようとしない」「発想がずれている」などと批判します。本来は企業の人事施策を支える両輪であるはずなのに、双方の意識はどんどん離れてしまっています。
そんな関係性の中で、人事部がある日突然一方的な通達を出したりするので、双方の信頼関係はさらに悪くなります。

私は最近、どちらかといえば「控え目すぎる」「遠慮しすぎる」、そして「いろいろ知らなすぎる」という人事部が増えているような感じがしています。もちろんすべてがそうではありませんし、経験豊富な方、優秀なスタッフはたくさんいますが、現場とうまく役割分担をしながら施策を進める、場面に応じたリーダーシップをとる、現場に直接情報を取りに行くというような動き方を、積極的にしている人事部は少ないように思います。

権威を振りかざす強権的な人事部では困りますし、今の世の中では論外だと思いますが、どちらかといえば、あまりにも控え目すぎ、もっと悪く言えば人任せ、無責任、当事者意識不足、腰が引けているという感じがします。

人事部のベストな立ち位置は、その会社によって違います。ただ、現場との望ましい距離感や役割分担、あるべき信頼関係など、現在の立ち位置を今一度見直してみても良いように思います。
人事部として取り組むべき業績貢献への入口は、まずはそこからではないかと思います。


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