2016年9月19日月曜日

「聞く気になれないアドバイス」の話



最近、自分の経験を活かして、企業や個人にアドバイスをするような仕事をしたいという相談を受けることが何度かありました。私よりも社会人経験が長い年上の人から若手の人まで、年齢は様々です。
私自身が人事コンサルタントということで、企業に対してアドバイスをする仕事であると見られてのことのようです。

ただ、私の場合はコンサルタントとは言っても、企業のかなり実務的な部分も協働したりするので、提言やアドバイスだけをしていれば良いという感じではありません。
あくまで私が今まで経験してきた中での感覚ですが、実際の現場で手を動かせない人に、企業はあまり価値を見出してくれないように思っています。口だけでなく、実際に自分で動いて、物事を形作れる人でなければだめだということです。

ここで、企業にアドバイスしたいというお話を伺った何人かの方から、共通して感じたことがあります。ご自身の知識や経験をできるだけ社会還元したいという思いがあり、その点は本当に素晴らしいとは思うものの、その一方で、程度の違いはありますが、「こうしたい」「こうすべき」という思いが強く、その思いが今まで実現し切れなかったことが多く、その経験に基づいて「アドバイスがしたい」とおっしゃいます。

この思い自体は悪いことではありませんが、こういう人がいざ企業アドバイスをする立場になると、自分が思っている「あるべき姿」が確立されているせいで、相手の事情を聴く耳の弱いところがあると感じます。「自分のしたいこと」がある一方で、「相手がしたいこと」など、相手の事情に合わせられないのです。そういうアドバイスは、相手にとって受け入れづらく、価値がないものになることも多くなってしまいます。

これは、かつての私自身にも言えたことですが、自分ではいろんな事情を受けいれられるだけの許容範囲には自信があったはずなのに、実際には「こんな考え方?」「こんなことすらも?」と思うようなことに何度も遭遇しました。自分が良かれと思ったことでも、相手にとっては簡単には聞き入れられない、場合によっては大きなお世話にアドバイスになってしまったことがありました。

コンサルタントの場合、自分がどんなに良いと信じたことでも、それを強引に押し付けたり、権威で屈服させたりすることはできません。成果を上げるためには、その考え方や方法を、相手に納得してもらうしかありません。
そんな中で強く意識するようになったのは「相手が聞く気になるアドバイス」ということです。

先日もある会合で、プレゼンの発表者に対して、あるベテランのコンサルタントの人が意見をする場面がありました。
「あなたは○○を知っていますか?」と始まり、「知らない」と答えると、「それではこの発表をするだけの基本がない」と言います。その後アドバイスということでおっしゃったこと自体は、確かのその通りで間違いではないと思いましたが、少なくとも私は、その人のいうアドバイスは聞く気になれませんでした。

とても偉い先生なのかもしれませんが、私はその方の素性を知りませんし、その時の話し方が上から一方的で、相手を見下してバカにしたような態度が見えてしまったからです。

企業を始め、他人にアドバイスができるだけの経験や知識を持っている方は、世の中にたくさんいると思います。
ただ、「相手が聞く気になるアドバイス」を、誰に対してでもできる人というのは、それほど多くはないと思います。私も精進しなければなりません。


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