2016年9月23日金曜日

「社内運動会」の復活に思うこ



最近、「社内運動会」が復活する傾向にあるという話があります。
社内運動会と言われると、ひと昔前のイメージがありますが、このところ実施する企業数は増えているのだそうです。

社内運動会の開催を、会場手配から設営、運営までを一括して請け負う代行業者もあるそうで、その中のある団体では、企業からの依頼数は年々倍増する勢いなのだそうです。

この団体の代表は、社内運動会が増えている理由を「リアルコミュニケーションの飢え」だと言っています。
「ITツールなどでコミュニケーションをはかる企業があるが、仕事以外に共通の話題を持ちにくく、その点、社内運動会は社員にニューヒーローが誕生したり、業務中だけではわからないリーダー資質が見られたり、交流のない部署の方と協力し合えたりと、スポーツだからこそのコミュニケーションを生み出す効果が期待できる」とのことです。
確かに最近の企業内のコミュニケーション事情を見ていると、何となくわかるような気がします。

また、かつてこの手の社内行事の代表格は「社員旅行」でしたが、要する日数や宿泊費などでかなりの経費がかかるため、1日で済むことや費用を抑えられて効果もそれなりに高いと評価される「社内運動会」のニーズが増えているようです。

企業側の開催目的としては、「従業員のモチベーションアップ」を一番に位置付ける企業が多いそうで、実際に実施したある企業では、その効果を「数字には出しにくい面はあるが、計測できない効果が期待できる」と答えています。

私が注目したのは、この「計測しにくい効果」という部分です。最近の日本企業が、一番排除してきた部分ではないかと思うからです。
私は人事コンサルタントという立場で企業の支援をする訳ですが、数年前に特に言われたのは、「短期的」で「目に見える成果」ということでした。
人事制度の導入効果、研修の実施効果といった効果測定に類することで、最近でこそ、中長期の視点も含めて、これらの情報を可視化、定量化して、次の施策に活かそうという動きがありますが、その当時は、本当に目先の短期的な成果を問われるということがありました。

例えば、研修を一度くらいやったからといって、その人が急に開眼して変わることはありません。ある時期に目覚めたとしても、それを長続きさせるためには継続的な取り組みが必要です。
ただ、そこで「短期的な成果を!」と言われると、それを実現するのは、なかなか難しいことです。人事施策で効果を得るには、やはりそれなりの時間と継続が必要です。

中には、短期的な成果があるというセールストークの研修プログラムなどがありますが、私から見れば、その時の瞬間的なインパクトが強いので短期的に成果が上がったように見えるものの、長い目で追いかければ元に戻ってしまっているようなものが大半です。

ただ、ここ最近でまた「計測しにくい効果」などということが言われ始めているということは、会社の風土、雰囲気、社員の表情といった、肌感覚に近い要素が、あらためて見直されてきているということなのだと思います。成果を定量化、数値化の中で追い続けてきた反動のようにも感じます。

私はこういう揺り戻しのような動きは、良い面と悪い面の両方があると思っています。
良い面は、こういう「計測しにくい効果」にも注目しなければならないという問題意識が復活したこと、悪い面では、それを昔と同じままの肌感覚の捉え方で済ませてしまおうとしているように見えることです。
「計測しにくい効果」を計測しにくいそのままで放置しては、効果を次に再現することが難しくなります。「計測しにくい効果」でも、何か計測できる指標はないか、方法はないかを考えて、それが仮説であっても検証することを続けなければ、「計測しにくい効果」はいずれまた端に追いやられてしまうと思います。

「社内運動会」が増える傾向は、私は好ましいことだと思います。ただしその効果は、もっと論理的に検証していく必要があるはずです。


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